2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16565
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
松尾 雅博 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (70456838)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 客観的眠気 / 主観的眠気 / 神経基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来一つの概念としてとらえられてきた「眠気」を主観・客観の2種類に分け、さらにそれぞれの精神運動機能ごとへの影響を、神経生理基盤を明らかにしながら解明することを目的とする。 これまで被験者が報告する「主観的眠気」と、生理機能検査などで明らかとなる「客観的眠気」が相関しないことが知られている。我々は、これらが異なる脳生理機能変化と関連しているとの仮説のもと、実際に入眠する前の眠気として注意能力に注目して研究を行っている。 近年、注意機能が警戒・転動・実行の3つの要素要素から構成されることが指摘されており、それぞれ脳の異なる部位・神経伝達物質を基盤にしていることが報告されている。さらに、これらを独立して評価する方法として、Attention Network Test(ANT)と言うタスクが確立されている。このタスクでは、コンピュータに次々に表示される矢印の方向を遅滞なくボタンにより答えていくことで達成されるが、その際には、脳の特定部位がごく短時間の間に活動するものと考えられている。我々は、この脳活動を可視化するため、事象関連電位と脳波電流源推定法を組み合わせて実験を行っている。 初年度の実験として、健康被験者を対象に日中にANTを行った。この実験により、個人ごとの注意プロファイルの推定が行えるなど、当施設で行うANT測定でも文献報告と同様の所見が再現されることが確認された。 さらに、より詳細な注意プロファイルを検証できるされるANTI-Vigilanceタスクを用いて、睡眠前後の注意機能の変動を調べた。健康成人に対して行ったこの実験では、ANTI-Vigilanceのスコアは睡眠後に上昇し、注意力の向上が示唆された。しかしながら習熟による学習効果や、反応戦略の違いでANTI-Vigilanceのスコアが変動しやすい可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行文献を基に、注意力測定法であるAttention Network Test(ANT)の確立を行った。国内での先行研究がないため、予備実験として成人男性を対象にANT施行した。この結果、少数での検証であるが、ANTにより注意力の個人ごとのプロファイルが再現性を持って確認され、このプロファイルが個人ごとに異なることも示唆された。これは先行研究とも一致するため、ANT検査が信頼できるものと判断できた。 一方で、注意3機能のうち警戒について、持続的な警戒を示すtonic成分と、誘発されるphasic成分に分離しうるという報告がある。この2成分を含めた検証タスクとして、Attention Network Test Intermittent Vigilance(ANT-IV)が報告されている。我々は、ANTの拡張版であるANT-IVを用いて睡眠と注意力の関係の検証を行った。健康成人を対象に、制限のない状態で睡眠をとってもらい、その前後での注意力変化をANT-IVを用いて調査した。この結果、ANT-IVの成績が、睡眠後に上昇することが明らかとなったが、これには被験者の習熟による効果・回答戦略に影響も関連することが考えられた。今後、ANT-IV、ANTのいずれかを採用し、より多くの被験者・睡眠障害患者のデータを集積していく。 さらに、睡眠障害患者のデータを集積するため、我々は睡眠臨床で用いられているポリソムノグラフィー (PSG)装置Aliceに対応した、外部装置を新たに開発した。これにより、睡眠検査中にも特別な脳波計への付け替えが必要なく、事象関連電位の測定が可能となるシステムの構築を行った。このシステムにより、PSG検査に引き続いて、注意力タスク負荷中に、事象関連電位を測定することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、注意機能測定方法の妥当性の検討を健康成人において行えている。ただ、対象者数が限られていたため、今後規模を広げ、検証結果を確立していく。 さらに、ポリソムノグラフィー検査と並行してこの注意機能測定方法を実施できる環境を整備したことで、今後睡眠障害患者を対象に「眠気」と「注意力」の関係について検証を進めていく。
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Research Products
(6 results)