2015 Fiscal Year Research-status Report
発語モデル動物の確立と発語タイミングを制御する脳内部位の解明
Project/Area Number |
15K16566
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西村 方孝 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (80613398)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高周波選択的難聴 / 音声コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者らによって見出されたモルモットの対話的音声コミュニケーションに注目し、相手の音声を聴いた上で発語のタイミングを制御する脳内部位の解明を目指している。本年度は、どの音声情報を元に発語の周期を決定しているのかを検討するため、そのコミュニケーション音声が属する音声帯域(≧10 kHz)の音が聴こえない高周波選択的難聴モルモットの作成を試みた。その結果、その高周波帯域の音に対する閾値が通常は40 dB SPL前後であるのに対して、慢性的に70~80 dB SPLを超える難聴を引き起こすことができた。その一方で、他のコミュニケーション音声が属する音声帯域(<10 kHz)の音に対する閾値では有意な差が見られず、高周波帯域に選択的な難聴動物になっていることが確認された。実際に記録された高い周波数のコミュニケーション音声の音圧から、その音声はモルモットの耳元で70 dB SPLを超えないことが見積もられることから、当初の計画通りの高周波選択的難聴が実現できたと言える。加えて、以後の研究遂行のためには安定的に音声コミュニケーションが観察・記録できることが必須となることから、より高い信号雑音比で音声を記録し、発声している固体の識別が可能なケージを設計・作成し、そのケージでの音声及び行動の記録を行った。その結果、研究対象としている音声コミュニケーションが観測される確率が高くなり、特に高い周波数帯域の信号雑音比が改善した。今後、この難聴動物と新設計の記録用ケージを用いて、行動実験や次年度に予定している因果性の検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の途中で、モルモットを生産している業者(後に廃業)で感染症が蔓延し、その業者からモルモットを購入していた本研究室のモルモットも感染が強く疑われたため、実験に使用していたモルモット全てを処分し、本研究室の飼育室内を殺菌消毒する必要に迫られた。その後、生産業者の切り替え等に起因する代替モルモットの納入遅延、及び、代替モルモットでの音声コミュニケーションの再現性の確認等を行う必要があったため、当初の計画の一部は実施することが困難となり、進捗状況がやや遅延する結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で報告した代替モルモットでは、従来のモルモットで検証済みの対話的音声コミュニケーションや高周波選択的難聴モルモットの作成方法の再現性の確認が必要なため、今後の研究を推進するためには速やかにその確認を完了する必要がある。これらの確認は、次年度に計画している因果性の検討とほぼ平行して実施することが可能であることから、今後は、自由行動下のモルモットの脳内に刺激電極を埋め込む方法の確立及び人工的な聴感覚の惹起に重点を置いて研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
モルモット生産業者の切り替え等に伴うやむを得ない実験の一時中断によって、本年度に当初予定していた全ての実験を完了することができず、計画の一部を次年度で実施することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初使用する予定だった従来のモルモットは1匹あたり約4千円であったが、切り替え後の代替モルモットは1匹あたり約1万円と高額なため、次年度使用額は主に増加した動物費を補填するために使用される見込みである。
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