2016 Fiscal Year Research-status Report
「多民族国家」としてのチェコスロヴァキア1918-1992
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15K16575
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
森下 嘉之 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60589042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東欧 / 国境地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一次世界大戦後に成立したチェコスロヴァキア共和国の「多民族性」を、住民政策・追放政策および国境政策を通して再考することで、東欧唯一の民主主義国家と評された同国の政治・社会体制のなかに、どのような包摂と排除の論理が内包されていたのかを探るものである。 本年度においては、研究の射程を社会主義体制崩壊後の歴史記憶政策にまで広げることで、同国の国民史・歴史認識を問い直すことを目指した。これによって、本研究の対象を、戦前の「第一共和国」のみならず、ナチス占領期さらには戦後の共産主義期にまで視野に入れることが可能となった。また、本計画の研究手法に、空間論・歴史地理学を応用することで、本研究の課題の一つである国境政策においても研究を進めた。具体的には、同国の「国境地域」と称される地域で、戦後の社会主義体制成立期において同国政府が推進したチェコ人入植政策を取り上げ、その位置づけを分析した。これらの研究を進めるために、国内外の研究機関において史料調査を行ったほか、チェコおよびドイツの現地研究者とコンタクトを取り、今後の展望について情報交換を行った。 これらの研究成果は、本年度に刊行された『ロシア・ユーラシアの経済と社会』1005号および来年度刊行予定の編著において示される。また、2016年度には北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターのプロジェクトにおいても共同研究を実施することで、本研究を発展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は本研究の成果について、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターおよびエスニック・マイノリティ研究会さらにほかの共同研究の場において報告発表を行い、個人研究に加えて共同研究に対しても貢献することができた。このため、以降の研究においても共同研究での議論を踏まえた研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者は今年度に得られた成果をもとに、現地調査を継続することで今後の研究を進展させる予定である。また、共同研究・パネル報告の場を通して研究成果を発表するほか、論文としての成果を出していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
研究費は物品費、旅費共に本来の研究計画を踏まえておおむね順調に使用したが、勤務校での業務の関係上、長期休暇中の海外渡航がかなわず、次年度に繰り越すことにした。なお、昨年度のチェコ・ドイツ調査については別の研究プロジェクト(今年度限り)の援助を受けた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し額については、海外現地調査(チェコ、ドイツ他)において使用する予定である。
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Research Products
(2 results)