2015 Fiscal Year Research-status Report
米国における福祉権運動の展開 -人種、階級、ジェンダーの交錯
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15K16587
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
土屋 和代 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (60555621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ史 / 人種・エスニシティ / ジェンダー / 階級 / 貧困 / 生活保護 / 社会福祉 / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
①8月上旬にハワード大学(ワシントンDC)、ジョージ・ワイリー・センター(ロードアイランド州ポータケット)にて研究調査を行い、全米福祉権団体(NWRO)に関する史料を収集した。 ②第二次大戦後のアメリカにおいて、要扶養児童家族手当(AFDC)の受給者はどのように位置づけられたのか。受給者は「福祉に依存する母親」という言説に対し、いかなる異議申し立てを行ったのか。受給者が綴った詩のなかから読み取るとともに、無力さを感じてきた個々の受給者が結束し共闘する〈場〉として1966年に誕生した全米福祉権団体(NWRO)設立の経緯を明らかにした。「受給者が紡ぎだす詩―第二次大戦後のアメリカにおける〈福祉の危機〉と全米福祉権団体」という題目で講演し(2015年度アメリカ学会清水博賞受賞記念研究会、2015年10月24日、立教大学アメリカ研究所)、論文「『福祉権の聖歌』―全米福祉権団体の結成と人種、階級、ジェンダー」を執筆した(『立教アメリカン・スタディーズ』38号、2016年所収)。 ③全米福祉権団体(NWRO)を中心とした黒人低所得者のフェミニストが、性と生殖をめぐる権利を奪う政府をいかに告発し、公的資金援助の下秘密裏に行われてきた不妊施術を糾弾して政策に変更を迫ったのか、自らの子どもを産み/育てる権利を求め闘ったのかを分析した。「レルフ姉妹とマイケル・ブラウンのあいだ―ポスト公民権期アメリカの都市における身体と暴力」という題目で報告し(日本アメリカ史学会年次大会シンポジウムC「都市の人種関係史」、2015年9月27日、北海道大学)、論文「誰の〈身体〉か?―アメリカの福祉権運動と性と生殖をめぐる政治」を執筆した(小松原由理編『〈68年〉の性―変容する社会と「わたし」の身体』(青弓社、2016年所収)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、8月上旬に全米福祉権団体(NWRO)に関する史料の収集を行い、アメリカの福祉権運動について二つのテーマで論文を執筆した(「『福祉権の聖歌』―全米福祉権団体の結成と人種、階級、ジェンダー」、「誰の〈身体〉か?―アメリカの福祉権運動と性と生殖をめぐる政治」)。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計画に沿って、アメリカの福祉権運動について史料収集・調査を行い、論文執筆を進める。全米福祉権団体(NWRO)による最低所得保障を求めた闘争と、それへのR・ニクソン政権の対応(「家族支援計画」事業)について研究を進める。ロス・アンジェルスの黒人居住区や人種・エスニック集団間の歴史に関する史料を収集するため、29年度に予定した調査を早めて行う予定である。
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Causes of Carryover |
端数が余ったが、ほぼ計画通り執行した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用予定の物品費(図書購入等)に使用する。
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