2016 Fiscal Year Research-status Report
米国における福祉権運動の展開 -人種、階級、ジェンダーの交錯
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15K16587
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 和代 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60555621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ史 / 福祉 / 人種・エスニシティ / 階級 / 貧困 / ジェンダー / 社会保障 / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず2016年8月5日から13日にかけてカリフォルニア大学ロスアンジェルス校を中心にロスアンジェルスで研究調査を行い、要扶養児童家族手当(AFDC)の受給者による組織「全米福祉権団体(NWRO)」やR・ニクソン政権の福祉政策に関する史料収集を行った。2015年夏に行った調査と上記の史料収集に基づき、アメリカの福祉権運動に関して以下の二側面に注目し研究を進めた。 (1)生存権をめぐる闘争―公民権運動と福祉権運動: 公民権運動及び同時代に展開した貧困対策事業から派生し、公民権運動が遺した課題に取り組んだNWROはどのように福祉を「権利」として書き換えたのか。厳寒のなか通学する際の防寒着を購入する権利や真冬の暖房費を得る権利や家賃滞納による退去に抗う権利など、日々の生活の場(衣食住)における活動の分析を通して、NWROが目指した「福祉権/生存権」とはいかなるものであったのかを検討した。 (2)誰のための『福祉』か―保証所得をめぐって: 1969年8月8日、リチャード・ニクソンは児童を扶養する全ての家族に年間1,600ドル(四人家族の場合)を給付する計画を発表した。このニクソン政権による「家族支援計画」にNWROはなぜ反対したのか。ニクソン政権やNWROの文書をもとに、60年代末から70年代初頭にかけての都市と福祉をめぐる状況の変化がどのように「家族支援計画」の命運に影響を与えたのかを考察した。 上記の課題に加えて、ワッツ・タワーが1965年のワッツ蜂起以降いかに「コミュニティ」再生と文化創造の〈場〉となったのかを分析し、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り「保証所得」に関する研究を進めた。また生存権をめぐる闘争についても2017年5月に報告予定のため原稿を執筆した。加えて、多人種都市ロスアンジェルスにおけるワッツ・タワーの歴史について小論をまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績(1)の内容について、西洋史学会・小シンポジウム3「黒人女性の視点から再評価する公民権運動 ―人種、ジェンダー、階層、宗教による差別解消と正義を求める運動との有機的関連」(一橋大学、2017年5月21日)にて報告予定である。 また、(2)の研究内容についてはアメリカ学会第51回年次大会・部会B「アメリカ型福祉国家再考」(早稲田大学、2017年6月4日)にて報告することが決定している(報告後加筆修正を行い、論文にまとめる予定である)。 さらに、G・ワイリーら黒人ミドルクラス男性の指導者と、J・ティルモンら福祉受給者のシングルマザ ーとの間に活動の優先順位をめぐっていかなるくい違いが生まれたのか、両者の齟齬は NWRO にいかなる亀裂を生じさせ、組織を解体に導く一因となったのかを検討する。
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Causes of Carryover |
2017年度に予定していたロスアンジェルスでの調査を2016年夏に行い、その残額が余ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究課題を遂行するために必要な文献の購入、史料の収集を行う予定である。
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