2017 Fiscal Year Research-status Report
ボルネオの自然資源管理と地域住民ーFSC認証制度とREDD+の比較から
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15K16590
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 大輔 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, その他 (30616016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 森林認証制度 / REDD+ / FPIC / 社会的影響評価 / FSC / マレーシア / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国内外のFSC森林認証制度の新基準実施に関わる動きについて調査し、とくに先住民族の権利の保障のあり方に関して調査を行った。マレーシア、インドネシアにおいて、森林認証制度の導入後、社会面の影響について利害関係者からの聞き取りデータを分析し、検討をおこなった。また11月にカナダ・バンクーバーで開催された3年に1回開催されるFSC総会に参画し、先住民族の権利保障、FPICに関する聞き取り調査、情報収集をおこなった。FSCの社会部会、先住民族常設委員会の会合に参加し、FSC認証におけるFPICのあり方について議論を行った。先住民族常設委員会とは、FSCにおける先住民族の権利保障をより明確とするために設立された理事会直属の諮問機関であり、世界各地の先住民族グループの代表によって構成されている。FSCにはすでにFPICガイトラインを定めているが、実際の審査で利用があまり徹底されていない状況である。そこで、簡略化したガイドラインを作成し、審査の付随したものとする手続きが進行している。しかしFPICを効果的に実施プロセスに導入するかが大きな課題であり、国内外で認証林にてフィールドテストを実施している。また本総会できまった主な動議には、1994年の森林転換の期限年限についての議論を行うことや小規模林家、コミュニティを対象した森林認証の実施にむけたプロセスが進められることとなった。この森林転換年限の問題は早くから熱帯諸国から、差別的な制度だとして是正をもとめてきており、植林企業なども変更を求めている。一方、年限撤廃によって、森林認証の取得が森林減少、天然林の人工林への転換促進につながりかねないと懸念するNGOも含めた今後本格的な作業部会が開催されることとなっている。本科研の成果の一部として昭和堂から1章を担当した編著本が2018年に出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年度11月に、3年に1回開催されるFSC総会(カナダ・バンクーバー)に参画し、先住民族の権利保障、FPICに関する聞き取り調査、情報収集を行うことができたことは、本研究課題においても貴重な機会となり、重要なデータを取得することができた。また先住民族常設委員会メンバーとの連携できたことも、FSCにおけるFPIC制度のより深い理解につながり、有益であった。またマレーシア、インドネシアでの認証制度に関わる利害関係者への聞き取りができ、最新の情報や関連の動きについて情報を得ることができたことも大きな進展であった。 一方で昨年度の途中で生じた異動にともない、科研の移管手続きに予想以上に時間がかかってしまった。またインドネシアの研究調査取得手続きが、カウンターパートの予定に伴い年度末にずれこんだことから、フィールド調査を予定を平成30年度へ先延ばしすることとなった。その結果平成30年度に研究を延長して実施することとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで得たデータの分析、解析を進めるとともに、インドネシア、マレーシアの森林認証制度に関わる関係者からの追加調査を実施する。またインドネシアではREDD+のVCS認証を取得している森林コンセッションを訪問し、地域住民との協働の状況について調査を実施する。またマレーシアでは森林認証が拡大しており、とくに小農についての影響をいかに軽減するかについての動きが進みつつある。とくに社会影響評価の実施について比較研究を実施する。またFPICガイドラインの実施のためのフィールド調査をにむけて、平成30年度は科研の最終年度として、研究成果の国際学会での発表、マレーシア、インドネシアの森林認証制度の状況について社会影響調査の分析、ワーキングペーパーの作成、査読付き論文への投稿、編集本の作成を予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度の途中での異動にともない、科研費の移管手続きに予想以上に時間がかかってしまった。またインドネシアの研究調査取得手続きが、カウンターパートの予定に伴い年度末にずれこんでしまった。平成30年度は追加のフィールド調査、現地謝金、データ分析、出版、国際会議への参加など実施する予定としている。
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