2015 Fiscal Year Research-status Report
「二重の経済危機」下における日本の縫製業のジェンダー分析―低価格・高品質の競争力
Project/Area Number |
15K16592
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長田 華子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20632285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本 / 縫製産業 / 低価格 / 高品質 / 技術 / 女性 / 岩手県 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は初年度に当たり、研究計画に示した通り、以下の3点について研究を行った。 第1に、日本において低価格・高品質が需要される背景について文献研究(日本経済研究、ファッション産業研究)を中心に、検討した。ただし、マクロ経済統計、消費動向調査などを用いた分析は十分でなく、次年度以降も継続課題とする。 第2に、日本企業の高品質、熟練化の議論の精緻化である。小池和男(『高品質日本の起源』、日本経済新聞出版社、2012年他)や中岡哲郎(『日本近代技術の形成』、朝日新聞出版、2008年)等の文献を中心に、講読し、日本製造業の技術形成、日本企業にとっての「技術」とは何かを検討した。また、本研究の研究対象である繊維や縫製企業にとっての「高品質」や「技術」とは何かについて検討するため、繊維産業の研究史(松村敏、『戦間期日本蚕糸業史研究』、1992年、岩手県蚕糸振興協議会、『岩手県蚕糸業史』、1980年など)を講読した。このほか、現地調査に備えて、地域経済に関する研究書の講読を行った。 第3に、岩手県(二戸市、久慈市)で2度(2016年2月と3月、それぞれ1週間程度)の調査を行った。二戸市、久慈市には縫製企業の集積が見られることから、両市における企業集積の歴史、集積の特徴、集積している企業の特徴(資本規模、創業年、誘致企業かどうかなど)、労働力の構成(人数、男女比、年齢)などを明らかにするために、地方自治体、企業での聞き取り調査を実施した。また工場内では、現場の女性労働者に個別インタビューを実施したほか、工場内の生産ライン上で生産工程に関する聞き取り調査を行った。終了後から現在にかけて、調査記録の整理を行っており、研究成果としてまとめるのは、次年度(2016年度)の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに、研究を遂行できている。ただし、研究実績の概要にも明記したように、文献研究でまだ検討不足の箇所があり、2016年度にも継続して行う必要のある研究課題が残されている。また、現地調査記録の整理を行っている途上であり、研究成果としてまとめることが出来なかった点で、研究計画以上の結果だとは評価しかねる。よって、おおむね順調に進展しているを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に従いながら、研究を遂行していく。当該年度の研究で課題として残った、文献研究と岩手県でのフィールド調査のまとめ、研究論文の執筆を早急に行う計画である。また次年度(2016年度)の8月には再度岩手県(二戸市、久慈市)で現地調査を行う予定であり、その調査準備を入念に行う。また、2017年2月に予定しているバングラデシュ調査に向けて、先行研究の講読をする予定である。
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