2016 Fiscal Year Research-status Report
人口希薄地域における生活・生業系文化遺産を対象とした観光マネジメントに関する研究
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15K16597
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
永瀬 節治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (10593452)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世界遺産 / 五箇山 / 緩衝地帯 / 滞在型観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、本研究の主対象地である南砺市五箇山地域を対象に、観光マネジメントにおいて近年重視される「滞在型観光」をいかに発展させるかという視点から、これまでの関連計画・施策において実現した事業等を整理し、歴史的視点から現在の施策状況を相対化するとともに、五箇山地域全体の観光資源を活用した滞在型観光のあり方や課題について検討した。五箇山においては、道路整備の進展により平野部とのアクセスが改善され始めた1970年代より、通過型観光から滞在型観光への転換を指向する施策が打ち出されてきたが、1990年代以降の世界遺産登録と高速道路整備により、入り込み客数が増加する一方で、その大半を合掌造り集落の見学を目的とした日帰り観光客が占める状況が続いており、世界遺産の緩衝地帯である五箇山地域(南砺市平・上平地域)全体での滞在型観光をいかに実現するかが大きな課題となっている。 一方で、同年度に実施した五箇山地域の全集落を対象とした景観資源調査を通じて、世界遺産に登録された相倉・菅沼集落や、重要文化財等の合掌造り家屋以外にも、五箇山を特徴づける地形条件や集落形態、近代以降のダム開発がもたらした水辺景観などの特徴的な景観資源が把握された。これらの魅力ある風景への認識を促し、現地で体感してもらえるような環境整備や滞在型プログラムの必要性も浮かび上がった。 これらの成果の一部については、2016年度建築学会大会(都市計画部門・研究懇談会資料)において報告を行うとともに、2017年度の建築学会大会においても口頭発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、主対象地域である南砺市五箇山地域において重点的に調査を行ったため、当初予定していた比較対象地域(白川郷、熊野、石見銀山)に関する調査が十分に行えていない。その理由として、五箇山の合掌造り集落のように特定のエリアのみに観光客が集中する状況を改善することは、人口希薄地域における観光マネジメントの主要課題の一つであり、そのためにも周辺エリア(五箇山においては世界遺産緩衝地帯でもある平・上平地域)における受け入れの可能性を、過去の施策や潜在する資源の把握を基礎として検討する必要があると判断したことによる。調査内容・手法を一部変更したことで上記の遅れが生じているが、研究の視点や内容そのものも、今年度の調査を通じて深めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、当初予定していた比較対象地域の調査が十分に行えていない状況にあるため、対象地域と調査内容を一部見直すとともに、事前の綿密な情報収集等を経て計画的な現地調査を行う。また、当初計画に掲げた五箇山地域における観光マネジメントの実証的検証については、今回の研究体制とスケジュールにおいては、地域関係者や観光関連事業者等との協力・連携体制に基づく大がかりな社会実験の実施は難しいと考えられることから、既存の観光ツアー等に関するアンケート調査やヒアリングを通じて検証するのが現実的であると考える。以上を踏まえ、最終年度において上記の調査を効果的に実施すべく、学内の研究協力者(研究代表者のゼミ生等)の動員を図るとともに、関係者との調整を進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度についても、実地調査は五箇山地域のみを対象として実施したため、比較対象地域への旅費として計上していた金額が支出されていない。また物品費についても、必要物品を精査した結果、当初想定よりも支出が抑えられた。以上より次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、物品費については関連文献等の購入や収集データ等の資料整理費用として80千円、和歌山市を起点とした調査旅費として、五箇山および白川郷(2泊3日×5人×2回)440千円、和歌山県熊野地域(1泊2日×4人×2回)160千円、石見銀山(2泊3日×2人×1回)120千円の計720千円、調査および資料整理等を補助する学生への謝金(5人×10日)として250千円、論文投稿費として50千円、その他印刷・複写費として17千円をそれぞれ計上し、前年度の残額417千円と平成29年度の申請額700千円をあわせた計1117千円を使用する。
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