2017 Fiscal Year Research-status Report
住宅利用を中心とした登録文化財の保全実態と観光資源化に関する研究
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15K16601
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
北山 めぐみ 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 助教 (40734257)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 登録文化財 / 観光資源化 / Beacon / 吉良川 / まちあるき |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる平成29年度は、登録文化財住宅の観光資源化に向けた考察・提案として、登録文化財住宅等の特徴や魅力を来訪者へ伝えるためのアプリケーション開発を試みた。建築物や町並みの本質的な魅力は、細かな意匠や目に見えない歴史に現れるため、来訪者による目視やマップだけでは伝えることが難しい。そのため、町並みガイドの養成が全国的にも進められているが、個人旅行が主流となりつつある現在は、こうした個人旅行者がガイドを依頼することはあまり多くない。そこで、筆者らおよび既往研究の成果をもとに、個々の建築物の魅力を現地にて直接スマートフォンへ送信するアプリケーション開発を行うことに至った。建築物に関する情報作成については、高知県内の歴史的建造物に関する資料・知識を有する高知県ヘリテージマネージャーが担い、アプリケーション開発には本校専攻科機械・電気専攻の今井研究室と連携した産学連携により開発した。所有者の了解のもと、Bluetooth発信機・Beaconを歴史的建造物に設置し、スマートフォン等でBeaconを感知するとBluetoothによって情報が送られてくるアプリケーションを作成した。また、ホームページを作成し、ホームページ上でどこからでも見ることのできる情報と、現地でBeaconを介してのみ見ることのできる情報との2段階を作成することで、現地へ足を運んでもらうこと狙いとした。今年度は、協力体制とデータの蓄積量から、国の重要伝統的建造物群保存地区である室戸市吉良川を対象として、地区内20箇所に設置を行った。今後は、来訪者がどれぐらいアプリケーションを開きそこに滞在しているかといった利用情報の解析を行うとともに、登録文化財住宅への拡大を進めていくことで、登録有形文化財住宅の観光資源化方策を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的には、大きく3段階の目標があり、平成29年度は3段階目について取り組んできた。すなわち、「登録文化財制度の運用に対する実態解明を通して、住宅としての生活景観の維持とこれを生かした観光資源化に向けた考察・提案であるが、これについては当初、シンポジウム等の一過性のある検討方策を考えていたが、アプリケーションの開発によって実証的かつ継続可能な方策として検討することが可能となったことから、当初の目標以上の成果が得られると考えている。ただし、観光資源化を考察する上で重要な、利用状況の検証がまだ行われていないことから、概ね順調に進展している段階であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として、作成したアプリケーションの利用状況の検証を行うとともに、観光資源化の観点(観光客・ゲスト)、生活景観の維持(住民・ホスト)の観点からの有用性を考察するため、現地での住民意識についてもヒアリングを行う。また、当該アプリケーションの利点として、今回ケーススタディとして取り上げた吉良川に限定することなく高知県内で広く運用可能であることから、他の地区への汎用や、登録文化財が点在するようなケースにおいても運用可能かどうかを検討していく。
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Causes of Carryover |
平成29年度は登録文化財住宅の観光資源化の考察・提案としてのアプリケーション開発を行ったが、年度内に利用状況の検証まで行うことができなかったため、次年度へ繰り越すこととなった。今年度は、利用状況の検証をシステム上および現地調査により行うことから、謝金・旅費として使用することを計画している。
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