2016 Fiscal Year Research-status Report
フランス現象学運動における患者と子どもの位相に関する研究
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15K16604
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
澤田 哲生 富山大学, 人文学部, 准教授 (60710168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メルロ=ポンティ / マルク・リシール / 発達心理学 / 精神分析 / 構想力 / 崇高 / 超‐事物 / 空想 |
Outline of Annual Research Achievements |
「フランス現象学運動における患者と子どもの位相に関する研究」が本報告書作成者(以下、作成者)の研究課題である。 研究活動2年目の平成28年度において、作成者は、戦後のフランスを代表する二人の現象学者(モーリス・メルロ=ポンティとマルク・リシール)の患者と子どもの行動に対する現象学的アプローチを研究した。まず、モーリス・メルロ=ポンティの『ソルボンヌ講義』を検討することで、発達心理学、児童心理学、児童精神分析の知見が、この現象学者の思想の発展にどのような形で、どのていど寄与したのかを検証した。研究成果として、論文を一件公刊し、国内で学会発表を一件行った。これにより、研究テーマの妥当性と学際性を確保した。同時に、マルク・リシールの病理的現象(神経症、倒錯、統合失調症)への現象学的アプローチを研究することで、病理的な現象の哲学的かつ人間学的な位相と価値を検証した。この研究成果として、論文を国外で2件公刊し(ともにフランス語)、国際学会およびシンポジウムでの口頭発表を計3件行った。口頭発表をつうじて国外の研究者と議論を重ね、さらに意見交換を入念に行ったことで、本研究の国際的な水準が確保された。 最後に来年度の展望を説明したい。前年度の研究と合わせて、とりわけメルロ=ポンティの発達心理学領域に対する現象学的アプローチの研究は、研究成果が揃いつつある。平成29年度、本研究課題最終年度に、この研究を完成させる予定である。かたや、マルク・リシールの現象学と病理的な現象の関係については、研究成果の蓄積は6割ていどである。来年度に重点的に研究することで、完成に近づける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度(平成27年度)の研究成果もふくめて、とりわけメルロ=ポンティの発達心理学領域に対する現象学的アプローチの研究は、研究成果が8割ていどまで揃いつつある。平成29年度、本研究課題最終年度に、この研究内容を完成させる予定である。 かたや、マルク・リシールの現象学、およびその病理的な現象に対するアプローチについては、研究成果の蓄積は6割ていどである。来年度に研究を重点的に行うことで、完成に近づける予定である。 以上の研究の進捗状況を鑑みて、本報告書作成者は、平成28年度の研究活動はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
メルロ=ポンティの発達心理学へのアプローチに関する研究は順調に進められている。したがって、来年度も研究成果を学会や研究誌で精力的に発表することで、研究の完成を推進する。 マルク・リシールの病理的現象に対するアプローチに関する研究は、この哲学者の古代から近代にいたる哲学史の膨大な知識も踏まえつつ研究を行うことの必要性が、平成28年度の研究を通じて明らかとなった。したがって、これまでどおり国内外での研究発表と論文の公刊を精力的に行うことを試みるのと同時に、各時代の思想の専門家と積極的に意見を交換し、それを研究成果に反映させることで、研究を推進する予定である。 また上記の二つの研究内容に共通した推進策として、これまでの研究の蓄積を一度まとめて俯瞰することで、平成29年度の研究の方向性をより精緻なものにする。
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Causes of Carryover |
平成28年7月にフランス現象学振興会の夏期セミナーに出席する予定であったが、前年11月のマルク・リシール教授(振興会主宰者)の死去にともない、セミナーの開催が中止となった。他方で、平成29年1月にモスクワ国立人文大学での研究発表を主催者のアンナ・ヤンポルスカヤ教授から急遽要請された。未使用となったフランス出張の予定金額と、急遽実施されたモスクワでの国際学会口頭発表にともなう海外出張使用金額の差額が、上記の次年度使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、フランス現象学振興会の夏期セミナーが7月25日から28日にかけて予定どおり開催されるので、上記の次年度使用額は、この海外出張にかかる費用の一部として使用する。
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Research Products
(7 results)