2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16611
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林 誓雄 福岡大学, 人文学部, 講師 (20736623)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューム / 徳の四源泉 / 一般的観点 / プロネーシス / 徳の統一性テーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、交付申請書に記載した課題(A)ヒュームにおいて、ある性格を「徳」と認定する際の規準の解明に関する研究を遂行した。以下がその概要である。 ヒュームによれば、われわれはなんらかの性格が、[1] 他の人々にとって有用となるのに自然と適しているか、[2] その人自身にとって有用となるのに自然と適しているか、もしくは [3] 他の人々にとって快適であるか、[4] その人自身にとって快適であるかによって、徳と認定するという。この「徳の四源泉」(必要条件)に照らして、われわれは任意の人物の性格特性について評価を下そうとする。しかしその評価について他の人たちと意見が合わないことがある。その原因は、それぞれの焦点を当てる先が異なっているからである。人々の間で意見を一致させて、同一の道徳的評価を下すために、われわれは「その所持者となんらかの直接的な結びつきや相互交流をもつ人たち」に焦点を合わせねばならない。これが、ヒュームにおけるもう一つの「徳の規準」(十分条件)だと考えられる。すなわち、ヒュームにおける「徳の規準」は、必要条件である「徳の四源泉」と十分条件である「一般的観点」との二つから成り立っていることを明らかにした。 さらに当該年度の研究では、徳に関するアリストテレス流の考えである「プロネーシス」をヒュームが認めているのかどうか、そして「徳の統一性テーゼ」をヒュームがどう捉えているのかについても考察を行なうことができた。とりわけ後者は本研究の平成29年度の課題の達成にもつながるものであり、極めて有意義な成果となった。なお、当該年度の研究成果は、「ヒュームにおける徳の規準」として、平成27年12月5日開催の西日本哲学会大会にて公表し、現在、同会の雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、ヒューム自身の「徳の規準」の解明と考察に関しては概ねその課題を達成することができた。ただし、現代の徳倫理学理論が示す「徳の規準」との比較検討が不十分なままであった。この点が、当該年度の研究遂行の瑕疵と言えるものである。しかしながら、「研究実績の概要」でも触れた通り、当該年度の研究では、平成29年度に遂行予定の研究課題の一部を進展させることがかない、その意味で、当初の研究計画以上に進展していると評価できるものと考えられる。 以上、一方で不十分な点がありながらも、他方で十分に過ぎる研究の進展があったため、全体としては「おおむね順調に進展している」と評価するものとした。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展していると自己点検評価を行なったことを受け、次年度の研究は当初計画の通り遂行する予定である。ただし、前年度の積み残しである、ヒュームの「徳の規準」と、現代徳倫理学者たちが論じている「徳の規準」との比較検討を遂行する必要がある。したがって、次年度では、当初の計画された課題に加え、前年度の課題の一部を、並行的に遂行することとする。
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