2015 Fiscal Year Research-status Report
『分析手帖』の研究―1960年代フランスにおける「概念の哲学」の発展
Project/Area Number |
15K16612
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
坂本 尚志 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60635142)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分析手帖 / 概念の哲学 / エピステモロジー / 認識論サークル / 学知 / アルチュセール / ラカン / 精神分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀以降のフランス思想に存在している「主体の哲学」と「概念の哲学」の対立軸について、主に「概念の哲学」の1960年代における展開を明らかにすることで理解することを目指している。 1960年代における「概念の哲学」は、1950年代以降さまざまな知の領域で展開されてきた構造主義的パラダイムの成果を受け発展した。そうした状況を端的に示しているのが、1960年代後半に高等師範学校生が結成した「認識論サークル」の機関誌『分析手帖』である。 このサークルのメンバーはアルチュセールの弟子であり、なおかつラカンの精神分析の強い影響を受けていた。彼らは、「学知の言説の歴史と理論」を構築するという、フランス・エピステモロジーの伝統の中に位置づけられる探求を行っていた。 今年度の研究は、「認識論サークル」と『分析手帖』の仕事の全容を解明する予備的作業を主に行った。『分析手帖』には2つの版が存在しているが、両者の異同についてはこれまで研究されていなかったため、両者の比較を行い、その成果に基づき校訂版冊子を作製した。 また、この予備的作業の成果を発表するとともに、『分析手帖』の計画において重要な位置を占めているカンギレムとフーコーにおける生と生命の概念に関する個別研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は『分析手帖』の全容を把握し、その問題点を明らかにすることが大きな目標の一つであった。その目標についてはほぼ完全に達成されている。また、『分析手帖』の計画を構成する3つの柱である精神分析、政治思想、エピステモロジーの各領域についても、各分野の研究者との情報交換や文献調査によって知見を蓄積するとともに、その成果の一端を公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、以下の3つの方向を特に深化させることを目的とする。 1)個別研究:精神分析、政治思想、エピステモロジーの各領域と『分析手帖』との関係の探求 2)比較研究:「概念の哲学」における精神分析、政治思想、エピステモロジーの各領域相互の関係性について、『分析手帖』の達成を踏まえつつ明らかにする。 3)総合研究:個別研究、比較研究両者の成果を基礎として、1960年代フランスにおける「概念の哲学」の展開の思想史的見取り図を描き出す。
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Causes of Carryover |
当初計画では当該年度に海外調査を行う予定であったが、国内における調査研究の進展が見込み以上であった。海外調査については次年度以降に実行することとしたために、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査の渡航費、滞在費、ならびに資料収集費の一部として使用する予定である。
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