2015 Fiscal Year Research-status Report
オイゲン・フィンクを中心とした現象学的世界概念の体系的・哲学史的研究
Project/Area Number |
15K16615
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池田 裕輔 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (80748525)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世界 / 現象学 / 超越論的哲学 / フィンク / カント / フッサール / ハイデガー / フランス現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下、本年度における報告者の研究経過および研究実績の概要について記す。 (研究経過)本研究課題「オイゲン・フィンクを中心とした現象学的世界概念の包括的研究」は、その目的に照らして、①主にカントとカント以降の哲学的世界概念の伝統的理解を解明を目的とする「世界概念の歴史的解明」、②現象学におけるその哲学的展開の内実を、主にオイゲン・フィンクの思想を中心として論証的に提示する「現象学的世界概念の体系的解明」、および、③その哲学史的位置づけと意義を明らかにする「現象学的世界概念の哲学史への貢献の解明」の三つの軸を持つものである。本年度は、当初の予定通り、①および②の作業に従事した。①に関しては、主にフィンクのカント解釈を手引きとしてカントの世界概念の解明作業に従事し、②に関しては、(a)報告者のこれまでのフィンク研究を展開して、その現象学的世界論の構想の体系的に描き出す作業、また、(b)フッサールをはじめとする現象学における世界概念がもつ、「時間」や「感性と悟性」といった伝統的な哲学的問題への応答と寄与を明示化、その哲学的・体系的意義を示す作業、および、(c)現象学的世界論の現代フランス現象学における展開を追跡し、その概略を示す作業に取り組んだ。 (研究実績)本年度の研究は、とりわけ、「現象学的世界概念の体系的解明」に関しては、上記の3点を扱った極めて包括的なものであり、また、その研究成果に関しても、査読付き単著論文2本、国内学会研究発表2本、国際学会研究発表等7本を公表し、量的にも十二分に満足すべきものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、①カントを中心とする「世界概念の歴史的解明」および②オイゲン・フィンクの思想を中心とした「現象学的世界概念の体系的解明」に取り組んだ。その際、次年度の具体的な研究課題である③「現象学的世界概念の哲学史への貢献の解明」という作業に不可欠な、世界論という観点からした現象学における「時間」および「感性と悟性」の解明にも従事し、更に、その研究成果を一定公表した。これは当初の計画では、次年度に取り組まれる予定の課題であった。よって、本研究は、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初の予定通り、上記の研究成果である①カントを中心とした「世界概念の歴史的解明」およびに②オイゲン・フィンクの思想を中心とした「現象学的世界概念の体系的解明」に基づいて、③「現象学的世界概念の哲学史への貢献の解明」作業に取り組む。上記①および②という、現象学的世界概念の哲学史的位置づけを目指す本作業が前提とする作業は十分な成果を挙げており、よって、研究計画の変更の必要は認められない。しかし、③の作業をおこなう際に、個別の論点として、カントと現象学における世界論の根本的差異を形作るものといえる、それぞれの「現象」概念の主題的解明に取り組む必要があるが、この点が、目下、やや不十分であるといえる。本年度は、この点に留意しつつ、現象学的世界概念の哲学史的位置づけ作業に取り組むものとする。
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Research Products
(13 results)