2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16617
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中村 未来 福岡大学, 人文学部, 講師 (50709532)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新出土文献 / 秦簡 / 戦国竹簡 / 清華簡 / 北京大学蔵秦簡 / 中国思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新出土文献を釈読・整理し、また新出土文献と伝世文献の内容とを比較検討することにより、どのように経書や聖賢故事が成立・変遷したかを明らかにすることを目指す。 本年度は、主に新出土文献を含む『尚書』関連文献の再整理と、近年、日本において発表された簡帛研究のとりまとめを行った。『尚書』関連の新出土文献については、特に清華大学蔵戦国竹簡(清華簡)に多く含まれている。そのため、伝世する『尚書』テキストの変容を整理しつつ、清華簡に見える内容を伝世文献と比較し、改めてその位置づけについて考察した。簡帛研究のとりまとめに関しては、大阪大学の草野友子氏、東京大学の海老根量介氏と共同研究を行い、報告者は主に2016~2017年に日本で発表された楚簡・秦簡の著書や論考を網羅的に収集してその概要を示した。 また、北京大学蔵秦簡(北大秦簡)『泰原有死者』を釈読し、当該文献に見える死生観や葬祭儀礼についても、初歩的な検討を加えた。 なお、近年陸続と公開される新出土文献は、出土地不明の非発掘簡(盗掘簡や骨董簡)が多く、必然的にその真偽が問題となる。これらの竹簡を研究対象として扱う際には、勿論、慎重な態度で臨まねばならないが、これらの新史料を単に「偽書」として研究対象から除外し、全く検討しないということはできないと考える。そのため、「偽書」の問題は古今東西様々な方面から注目され言及されているが、報告者も中国古典における真偽問題について自己の見解をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は清華簡に含まれる新たな文献、および安徽大学蔵戦国竹簡(安大簡)や北大秦簡に見られる経書関連文献を研究対象として取り上げる予定であったが、図版・釈文の刊行が遅れ、内容を検討することができない状況であった。そのため、図版刊行に先だち、学術誌に全文が公開されている『泰原有死者』を取り上げて、葬祭儀礼に関する初歩的な検討を行った。また、本年度はこれまでの『尚書』に関する研究を整理し、近年の出土関連研究についてのとりまとめ作業を行った。それらの成果は『教養としての中国古典』(湯浅邦弘編著、ミネルヴァ書房、2018)所収の「尚書」、および「2016-2017年日本學界中國出土簡帛研究概述」(『簡帛』第17輯、2018年12月)として、すでに学術誌に掲載されている。 なお、2018年11月には清華簡の第8分冊が刊行されたが、報告者は産休・育休に入っていたため、いまだ当該文献については考察できていない。 以上、図版公開の遅れと、産休・育休の取得によって、研究は予定よりやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年末に刊行された清華簡第8分冊には、『尚書』冏命篇に関する文献や、儒家や墨家に関する文献が含まれている。まずは早急にこれらの文献を取り上げ、釈読作業を進めたい。また、安大簡や北大漢簡・秦簡も、図版および釈文が公開された際には、すぐに研究に着手できるよう、学術誌より常に最新の情報を入手したい。 さらに、次年度は本研究の最終年度であるため、先秦~漢代に至る経書や聖賢故事関連の出土文献を整理し、伝世文献とすり合わせ、思想史上に位置づけることを目指す。個別文献の釈読・整理作業を進めると同時に、総合的視点からも、それらの成立や変遷を考察する。 なお、湖北省荊州竜会河北岸墓地324号墓より324枚の戦国楚簡が出土し、そこには周の武王や周公旦などの事跡が記された文献があるとの情報を得た。これらの文献も公開されれば、すぐに研究対象として取り上げたい。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度刊行される予定であった新出土文献の図版刊行が遅れたこと、また報告者が産休・育休を取得し、研究時間の確保が難しくなったことから、次年度予算として経費を繰り越した。
(使用計画)2018年11月に刊行された清華簡第8分冊や、次年度、続刊が予定されている北京大学蔵西漢竹書・北京大学蔵秦簡、安徽大学蔵戦国竹簡などの図版・資料購入費として使用する。また、研究会や学会参加旅費としても使用したい。
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Research Products
(4 results)