2018 Fiscal Year Research-status Report
北アフリカ地域の多層文化構造における食用・薬用植物の宗教的意味についての研究
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15K16623
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
喜田川 たまき (渡邉たまき) 筑波大学, 地中海・北アフリカ研究センター, 研究員 (50721685)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農耕儀礼 / アイデンティティ / 聖者信仰 / 基層文化 / 宗教文化の付加価値化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 文献収集:国内で入手可能な文献を収集し調査を進めた。昨年までの調査で明らかになった南部チュニジアのオリーブに関する農耕儀礼及び聖者信仰と複合した習俗が、当該地域以外でも行われていた事、また前世期のそれと比較して現在見られる現象の変容が確認された。植民地時代以降の人類学者によって行われた諸調査の内容と、本研究の調査によって得られた内容を詳細に比較検討し、フォローアップ調査を行う際の指針とした。また、こうした現象の周辺的条件として、南チュニジアを中心とした現地の食薬文化、オリーブ農業、産業について資料調査を行った。それにより、南チュニジアの乾燥傾度の高さや近代的オリーブ農法の導入の困難さが、伝統的農法や食文化を保存し、植物にまつわる伝統習俗保存に影響を与えた可能性を見出した。 2. 文化受容性調査データ分析:昨年度日本で行った、チュニジアのオリーブ聖者複合習俗に関する受容性調査の結果を分析した。それにより北アフリカの伝統的食文化や宗教習俗に関する情報は、日本人のオリーブオイルの購買意欲を向上させることが明らかになった。これは北アフリカの伝統文化情報が、付加価値として現地の食物資源産業を促進する可能性を示唆しており、これらの結果を成果として論文にまとめた。出版は2019年度を予定している。 3. 研究発表:これまでの研究で得られた成果、特にオリーブ農耕儀礼と聖者信仰の複合した習俗の宗教的意味、イスラーム文化の影響の中でも北アフリカ古来の独自性を保っていると考えられるアマジグの文化的アイデンティティについて、7月に行われたThe European Conference on Ethics, Religion and Philosophy 2018において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初チュニジア、モロッコ、アルジェリアでの調査実施を目指していたが安全面からメイン調査地としてチュニジアを選んだ。また伝統的なオリーブ習俗の収集に予想以上に時間がかかったため、ほかの地域での調査が十分になされなかった。 昨年度のモロッコでの予備調査に続いて本年度も調査を予定していたが、受け入れ先である王立アマジグ研究所と都合が合わず現地調査を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
モロッコでの予備調査を踏まえて本調査を行い、北アフリカのオリーブ信仰の全体像を探るという事業目的を果たすために補助事業期間延長を願い出、受理されたため、2019年度は南部モロッコ、スース地方において、オリーブ・アルガン生産女性共同体を中心に、オリーブもしくはアルガンに関連した農耕儀礼と聖者崇拝の複合習俗の有無について、現地調査を行う予定である。 また、昨年まとめた北アフリカオリーブ文化受容性に関する論文を発表予定である。 また、最終年度となるのでチュニジアで得られた成果とモロッコの成果を比較し、北アフリカの基層文化としての特徴をまとめ、成果報告書を作成する。
また継続研究として、若手研究「食用・薬用植物への信仰に見られる北アフリカの多層文化構造と食の新たな価値」を申請し受理されたため、本研究と補完的に運用し進めていきたい。
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Causes of Carryover |
予定が合わず計画していた現地調査に行くことができなかったので旅費に余剰が出た。次年度における現地調査と、成果報告論文の出版などに充てる予定である。
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Research Products
(2 results)