2016 Fiscal Year Research-status Report
「人類」というユートピア――19世紀フランスにおける社会的なものと宗教的なもの
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15K16628
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金山 準 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30537072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教的なもの / 社会的なもの / 連帯 / 主権 / ライシテ / ユートピア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、宗教にまで高められた理念としての「人類」思想を主軸としつつ、19世紀中葉のフランス社会思想の読み直しを図ることである。主対象はオーギュスト・コント、ピエール・ルルー、ピエール=ジョゼフ・プルードンの三者である。 本年度の第一の成果としては、「人類」理念に対する重要な批判者としてプルードンの思想についての論文を公表した。そこでは人類教やカトリシズムに代表される宗教への批判と彼の社会構想の関連が重要なテーマとなるが、その点に関連して3本の論文を発表した("De l'antinomie a la serie ; la notion de l'equilibre chez Proudhon", 「プルードンと弁証法」,「神の主権と人間の連合--プルードンの連合主義論」)。とくに彼の連合主義を論じた最後の論文では、彼の宗教批判(とりわけ神概念に対するそれ)が、彼のよく知られた連合主義の構想の重要な背景となっていることを示した。 第二に、P・ルルー、A・コントについての研究を前年度に引き続き遂行した。プルードンが「人類教」を強く批判したとすれば、前二者はその積極的な提唱者として主要な存在である。とくにルルーとプルードンは、個人の自由の擁護(リベラルな側面)と、平等の実現(ソーシャルな側面)の双方に強い関心を示した点で軌を一にする。他方で彼らは「人類教」についての位置づけは正反対である。その交錯と分岐を、個が他者への関係に開かれる契機についての存在論的な議論(ルルーであれば「無限」、プルードンであれば「正義」)から探ることを試みた。その成果は部分的に上記の論文中に組み込まれているが、これを主題とした成果を公表するまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主対象として計画していたP・ルルーの思想については、研究成果を論文に部分的に反映するにとどまり、ルルーの思想を主題とする成果を公表するまでには至らなかった。他方でその検討の成果は、むしろ「人類教」の批判者であるプルードンの思想を理解するうえで益するところが大きく、後者についての研究は予想を上回って進展した。以上より、全体としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進については、内容面で大きな変更は予定していない。次年度は研究の最終年度であるが、本研究の主題は「人類教」をめぐる主要な思想家三者の理論的関係を通じて当時の思想史を読み直すことであり、各思想家について研究を深めると同時に、それら全体を俯瞰的・総合的に検討する視野を提起することが最大の目標となる。
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Causes of Carryover |
資料収集・研究打ち合わせのための渡欧を諸事情により延期せざるを得なくなったため、同目的分の支出を次年度に繰り越すこととなった。なお日本国内ないしオンラインで入手できる資料の検討を先に進めること、また在仏の研究者と可能なかぎりメールで連絡を行うなどして、計画への影響は最小限にとどめるよう努めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料収集・研究打ち合わせのための渡欧を、次年度上半期(可能な限り早い時期)に行う。
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Research Products
(3 results)