2017 Fiscal Year Annual Research Report
"Humanity" as an utopian notion; the social and the religious in the 19th century France
Project/Area Number |
15K16628
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金山 準 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30537072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教的なもの / プルードン / 人類教 / 社会的なもの / 理性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、宗教にまで高められた理念としての「人類」思想を主軸として、19世紀中葉のフランス社会思想の読み直しを図ることである。主対象はオーギュスト・コント、ピエール・ルルー、ピエール=ジョゼフ・プルードンの三者である。 最終年度である平成29年度は、プルードンの宗教批判と、宗教(とりわけ人類教とカトリシズム)に代わる新たなモラルの構築、またそれを可能にする社会体制や理念への問いについて検討を進めた。 プルードンにおける「人類」理念への批判は、根本的には「主権性」に対する批判である。彼の言う主権的存在とは、内的には一体不可分であり内部に対する絶対的支配権をもち、他方で外部に対しては並び立つものを認めず、その意味で拡張主義への傾向を必然的にもつ。前年度は、主権に取って代わるべき積極的な社会構想としての「連合」について検討を行ったが、本年度に新たに取り組んだのは、そのような社会構想の根本にある理念についての検討である。 そこでとくに着目したのが、プルードンにおける「集合(collectif)」への問いである。たとえばプルードンは、主権者の意志(一般意志)の表現としての法という観念を否定するが、他方で法は外在的な権威によって一方的に課されるものでもない。すなわち法は被治者がみずから制定するものでなければならない。そのような自己立法の根拠は意志ではなく「集合理性」に求められる。このように秩序の根幹をなす集合理性は、単なる調和や連帯ではなく、対立や葛藤やそれに伴う議論を経ることでのみ成立しうると考えられている。以上については、社会思想史学会での学会報告でその内容を発表した。
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