2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16629
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西 信康 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30571062)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 道家思想 / 生成論 / 出土資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、郭店楚簡『太一生水』の研究を進めた。その成果として、中国出土資料学会平成27年度第1回例会にて、「郭店楚簡『太一生水』の思想」と題する発表を行った。郭店楚簡『太一生水』の第一号簡から第八号簡には、一般に宇宙生成論等と呼ばれる記載があり、本発表では、その表現形式や概念の意味内容を再検討し、『太一生水』に構想されている生成現象の具体的な様相の解明を試みた。先ず、「太一」及び「水」について、これらが生成現象を論ずる文脈において言及されることの意味を検討した。特に「水」については、「水」の性質に対する当時の知識を実証的に把握することを目指した。次いで、『太一生水』の「天」「地」、「神」「明」、「陰」「陽」、「四時」、「冷」「熱」、「湿」「燥」、「歳」等について検討し、『太一生水』の生成論には、物質そのものでなく、物質の生成を促す運動原理に対する関心が見いだされることを指摘した。次いで、第八号簡以前の記載を前半部と後半部とに分け、この両者の間に観察される表現形式の違いに着目し、前者を「相輔以成」型生成論、後者を「所生」型生成論と名付けた。最後に、古くから指摘される『老子』の「道」の二重性について言及した。「道」は万物の根源と解釈されるが、その場合の「根源」とは、根源的な物質的元素(或いは状態)としての意味と、根源的な生成原理としての二重の意味が含まれること、これは『太一生水』の「太一」にも同様であることを確認した。なお、郭店楚簡『老子』丙本との関係については、その問題の発端が竹簡及び文字の形態の同一性にある以上、形態の同一性それ自体を根拠とした議論は論点先取りになること、したがって、思想内容を根拠とする見解が継続的に提示され検証されるべきことを、発表の冒頭において提言した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に障害は発生しなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、郭店楚簡『太一生水』の前半部に関する検討を進めたので、今後はその後半部の検討に取りかかる。これにより、当文献の思想的特徴を解明し、古代中国思想における生成論と処世訓との関連について、新たな知見を獲得したい。
|