2017 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical studies on reciprocal recognition among the different trends in the Sunni theology
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15K16630
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松山 洋平 名古屋外国語大学, 外国語学部, 講師 (50748704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スンナ派 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の平成29年度は、これまでの研究成果を反映した単著『イスラーム思想を読みとく』(筑摩書房、2017年10月、全256頁)を執筆し、出版した。 本書は、①「ムスリムはなぜ『過激派』を『破門』しないのか」、②「『過激派』と『穏健派』はどのような点で見解が異なるのか」、③「なぜ、同じスンナ派同士で争っているのか」といった問いにたいして、イスラム教の制度的な理由と神学的な背景を説明し、現代の論客の言論を分析しながら、現代の思想的争点を読み解くものである。具体的には、①の問題については、スンナ派には「教会」制度が存在しないため、「破門」という手続きがあり得ないという制度上の理由と、人を不信仰者とみなすことを抑制する神学的な背景を指摘した。②と③については、スンナ派内部の複数の神学潮流のあいだの相互認識と関係性についての研究成果を軸に、現代スンナ派神学派の思想マップを解説した。すなわち、アシュアリー学派やマートゥリーディー学派のような思弁神学の潮流と対立する「ハディースの徒」から、サラフ主義が生まれ、その一部が「ジハード主義」と位置付けられることを示した。また、以上のことを検討するさいには、古典神学書・法学書のみならず、現代の言論も分析対象とし、主要な論客の神学的傾向を考察した。また終章では、宗教市場理論の見方を応用し、現代イスラム思想の状況を、イジュティハードの正統な主体としての地位を競う場として表象した。
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Research Products
(1 results)