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2015 Fiscal Year Research-status Report

ヴァイマール期保守革命論の再検討:「ドイツらしさ」とプロテスタンティズムの関係

Research Project

Project/Area Number 15K16634
Research InstitutionNumazu National College of Technology

Principal Investigator

小柳 敦史  沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (60635308)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords保守革命 / プロテスタンティズム / シュペングラー / 運命
Outline of Annual Research Achievements

2015年度は本研究計画の初年度である。年度前半は研究計画にしたがい、O・シュペングラーの『西洋の没落』におけるキリスト教の描写および評価と、『西洋の没落』に対するプロテスタント神学者からの反応を分析した。
『西洋の没落』においてキリスト教の歴史はシュペングラーの循環史観と文化類型論によって分断されており、全体的にキリスト教を含めた宗教に対して否定的な評価が下されながらも、イエスやルターといった「英雄」には高い評価を与えていることが確認された。
プロテスタント神学者からのシュペングラー批判としては、1)『西洋の没落』におけるキリスト教についての叙述内容に関わるもの、2)『西洋の没落』における歴史叙述の基礎概念に関わるもの、の2つに整理できることが明らかになった。前者については事実誤認の指摘など、ほぼすべてが否定的なものであるが、後者、それも特に中心的な鍵概念である「運命Schicksal」概念については賛否両論が確認された。
「運命」概念はキリスト教思想において一定の位置を占めてはきたものの(cf. ヘーゲル)1910年代までそれほど主要な概念であったわけではない。しかし、1910年代後半から1920年代にかけて、この概念に対する注目が急激に高まる。そのことは、RGGの第1版(1913)には“Schicksal“に独立した項目が立てられていないが、第2版(1931)では項目立てされていることにも現れている。「運命」概念に対する評価としては、ショルツはその意義を否定するが、ハイム、E・ヒルシュ、W・エーレルトらは神学を刷新する積極的な力を認める。このうちヒルシュとエーレルトにおいては「運命」概念がナショナリズムおよび民族主義に結びつけられており、シュペングラーに端を発する「運命」概念が神学的に補強されている過程が確認できた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の研究計画では、1年目の前半に予備考察として『西洋の没落』におけるキリスト教描写と『西洋の没落』に対するプロテスタント神学者たちの反応をまとめ、その後保守革命論者たちのキリスト教に関する議論を考察し、2年目の途中からプロテスタント神学内部での保守革命的潮流を分析する予定となっていた。しかし、予備考察において、プロテスタント神学者たちが『西洋の没落』から受け取った「運命」概念が1920年代の神学思想において大きな反響を与えていたこと、しかもその反響のうちに保守革命論に対するそれぞれの神学者たちの距離の相違が見て取れることが明らかになった。そこで、研究計画とは順番を入れ替え、『西洋の没落』に関する予備考察から引き続き、プロテスタント神学における保守革命論の分析を進めることとした。プロテスタント神学者たちのシュペングラー論の分析から「運命」概念の重要性に気がつけたことで、プロテスタント神学における保守革命論の分析を行うために有効なメルクマールを得ることができ、結果として『西洋の没落』とそれに対する反応を扱うというアプローチが正しいものであったことが示された。
現在は「運命」概念を焦点としつつ、プロテスタント神学者たちの保守革命論の分析を進めている。すでにショルツ、ハイム、エーレルトについては関連テキストに目を通したので、今年度前半中にヒルシュの『ドイツの運命』の読解を終え、1920年代のプロテスタント神学における保守革命論的言説の特徴をまとめたい。
以上のように、研究順序に変更はあったものの、分量としてはほぼ予定通りのペースで進めており、おおむね順調に進捗していると言える。

Strategy for Future Research Activity

平成28年度前半は上記の通りに、プロテスタント神学における保守革命論について分析を進める。研究成果については日本基督教学会および日本宗教学会の全国大会にて口頭発表を行う。年度前半には上記と並行してメラー・ファン・デン・ブルック、E・ユンガー、E・クリーク、W・ゾンバルトといった代表的な保守革命論者の文献を収集する。
年度後半は収集した文献の読解を進め、「保守革命」の代表者の言説におけるプロテスタンティズム評価を分析する。これまでの研究の成果を生かし、1)イエスおよびルターという宗教的英雄に関する記述、2)「運命」概念の使用例と宗教的含意、に注目する。また、プロテスタント神学者たちとの文献上の依存関係や個人的な交友関係も視野に入れる。以上の分析から、「保守革命」論におけるドイツらしさにおいて、宗教改革によってプロテスタンティズムを生んだ国としてのドイツという認識がどのような意味を持っているかを明らかにする。

Causes of Carryover

ほぼ予定通りに助成金を執行したが、文献を一冊購入するには足りない残額が生じたため次年度使用額として次年度に繰り越した。

Expenditure Plan for Carryover Budget

少額の繰り越しであり、使用計画に大幅な変更はない。次年度使用額は物品費(保守革命論関連書籍代)に加算する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2015

All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] Avant-garde and Arrière-garde in German Protestantism2015

    • Author(s)
      KOYANAGI Atsushi
    • Organizer
      XXI International Association for the History of Religions World Congress
    • Place of Presentation
      Erfurt (Germany)
    • Year and Date
      2015-08-25 – 2015-08-25
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2017-01-06  

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