2016 Fiscal Year Research-status Report
近現代フランス習慣論の美学的射程―「創造」と「飽き」
Project/Area Number |
15K16635
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
春木 有亮 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80469535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美学 / 芸術 / 飽き / 感性 / かわいい / かっこいい / フランス / 習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の作業である文献精読のさいに、「理性(知性)」、「感性(感覚)」、「精神」、「身体」、「能動」、「受動」といった二元論的諸概念と習慣概念の関係を示す記述をピックアップした。2016年度は、ピックアップした箇所を中心に、再度、諸文献を確認しつつ、美学的見地からの習慣論の系譜を作成した。具体的には、個々の思想家が理性と感性の二元的枠組みの中で(あるいはそれを超えて)、どのように習慣概念を位置づけているかという視点から各思想家の習慣概念を散文的に記述し、諸思想家を分類した。 2015年度の文献精読のさいに、「飽き」にかかわる記述をピックアップした。2016年度は、ピックアップした箇所をもとに、飽き論の系譜のリストを作成した。 また、同じく2016年度に進めた、「感性的質」である「かっこいい」の研究のなかで、「かっこいい」が、その内包において、語源の一つである「恰好」から、適合性に対する感性(ぴったりきていることがぴったりくる)をひきついでいることを明らかにした。そのうえで、「かっこいい」は、逆説的に、適合の不適合(ぴったりくることがぴったりこない)、不適合の適合(ぴったりこないことがぴったりくる)をはらみ、「ずらし」や「はずし」という感性に至ることを見とおした(「「カッコイイとは、こういうこと」かーー適合性suitabilityの感性化」(美学会 第67回全国大会 2016年10月)、 「「カッコイイとは、こういうこと」かーー適合性suitabilityの感性化(発表要旨)」(『美学』67, 2, 98、2016年12月)、「「恰好」から「かっこいい」へ--適合性suitabilityの感性化」『人間科学研究』13号、2017年3月)。こうした逆説は、習慣と「飽き」の問題の圏内で論じうるテーマであり、ひきつづき、本研究課題のサブテーマの一つという位置づけで論究したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である「飽き」概念の研究とは別に進めていた「かっこいい」概念の研究を、「飽き」概念研究にくみいれうることを発見したから。
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Strategy for Future Research Activity |
習慣論の系譜を再編成したうえで、それに基づき、メルロ=ポンティまでを視野に入れた美学的習慣論の系譜、および「飽き」論を包括的なかたちで散文的に記述していく。その成果の一部と、同時に進める「かっこいい」研究の成果を、美学会をはじめ、学会で発表し、また、研究雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
物品を、研究費の申請したときに想定していたよりも、安く購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費の一部に使用します。
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