2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16640
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
葛西 周 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (00584161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジャンル論 / 日本音楽史 / ナショナル・アイデンティティ / ラベリング / ポストコロニアル理論 / 満洲 / 台湾 / 朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はジャンル論の先行研究を整理しながら時代背景を確認するとともに、日本国内で収集可能な新聞雑誌の調査にあたった。国立国会図書館、東京藝術大学付属図書館、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館を主たる調査拠点とし、特に1930年代後半~1945年に刊行された新聞雑誌から関連記事を抽出した。 さらに、関西地域に出張し、阪急文化財団池田文庫において宝塚歌劇の資料を、国立民族学博物館およびEXPO’70パビリオンにて万博で用いられた音楽に関する資料を、駒鳥文庫および東映京都スタジオ映画資料室にて戦中期の映画に関する資料を、大阪府立中之島図書館にて関西洋楽史の資料をそれぞれ調査した。 研究成果をまとめた論文「日中戦争期の満洲における文化工作および音楽ジャンル観に関する考察」が、馬場毅編『多角的視点から見た日中戦争:政治・経済・軍事・文化・民族の相克』(集広舎、 2015年5月)に収録された。また、国際日本文化研究センター第13回共同研究会「万国博覧会と人間の歴史:アジアを中心に」に招聘され、「明治期日本の万博への参加:楽器・音楽書等の音楽関連出品物を中心に」と題して、音楽の分類体系について博覧会を事例として発表した。今年度はとりわけ戦前~戦時下のアマチュアによる音楽活動に関する資料収集に注力しており、その分析結果については、「日本におけるマンドリンの受容と展開:戦前アマチュア音楽活動の一事例として」(第11回中日音楽比較国際学術会議、2015年11月)等の口頭発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、都内での資料収集・整理を計画どおり進めることができ、加えて関西に所在する諸機関の資料調査も実施できた。阪急文化財団池田文庫、EXPO’70パビリオン、東映京都スタジオ映画資料室といった専門機関での調査が実現したため、当初予定していた全国紙の調査よりも、所蔵場所が限られている音楽や映画、舞踊、劇場文化等の専門誌の調査を優先しておこなった。 平成28年度に発表を予定していた中日音楽比較研究国際学術会議が当該年度に開催されることになったため、発表媒体をスケジュールの都合で変更したが、口頭発表・論文発表の件数は予定数を満たしている。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽等の専門誌の資料調査を継続するのに加え、情報局の検閲記録や大政翼賛会文化部文化運動資料など、予定していた軍部諸機関の資料調査に着手する。また、太平洋戦争期の内地および 外地ラジオ放送の調査に着手する。それに伴い、NHK 放送文化研究所および NHK 放送博物館所蔵の放送史資料を分析する。 今後は特に1930年代~40年代の舞台や映画で用いられた音楽に焦点を絞って分析を進め、その成果を口頭発表したのち、論文としてまとめて学会誌に投稿する予定である。また、共通の問題意識を持つ隣接領域の研究者とともに、音楽ジャンル観に関するラウンドテーブルを企画することを検討している。
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Causes of Carryover |
台湾へ資料調査の目的で渡航予定であったが、当該年度に学務の担当内容が変更になったことにより、スケジュールの都合で実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
台湾での資料調査を平成28年度に実施することとし、その費用に充てる。
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