2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16640
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
葛西 周 東京藝術大学, 大学院国際芸術創造研究科, 講師 (00584161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジャンル論 / 日本音楽史 / ナショナル・アイデンティティ / ラベリング / ポストコロニアル理論 / 満洲 / 台湾 / 朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、戦時下の宝塚歌劇における多様な音楽の使用状況について、ジャンル観に焦点を絞って考察すべく、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館ならびに阪急文化財団池田文庫にて資料調査を進めた。その成果をまずは「レビュウのなかの「外地」:日中戦争期の宝塚歌劇を中心に」(日本比較文学会中部支部第40回大会、2016年5月)および「聴覚体系中表現出的“中国性” :以戦時宝塚歌劇的楽曲為事例」(国際学術検討会「一九四〇年代戦時宣伝及媒体表象」、2016年10月)として口頭発表し、それらをまとめた論文「日中戦争期の新作レビュウにおける「中国」表象とその背景:宝塚歌劇を中心に」が『演劇研究』(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、2017年3月)に掲載された。 並行して、教育・啓蒙を目的とする戦時下のドキュメンタリー映画で使用された音楽について分析し、「植民地期台湾の文化映画における音楽:『全台湾』を中心に」(植民地期台湾映画フィルム研究会、2016年9月)と題する口頭発表をおこなった。この発表に基づく論文は三澤真美恵編『植民地期台湾の映画:発見されたプロパガンダ・フィルムの研究』(東京大学出版会、2017年5月刊行予定)への収録が決定している。 また、Michael Denning“Noise Uprising: The Audiopolitics of a World Musical Revolution"(Verso, 2015)の批判的読解を目的としたワークショップ「初期電気録音時代の世界音楽地政学」(第28回日本ポピュラー音楽学会大会、2016年12月)に登壇した。本書で欧米における「耳の脱植民地化」として論じられる1920年代後半以降の世界的なヴァナキュラー音楽の勃興について、擬似西洋的立場の日本では「耳の帝国化」の現象と捉えられるという、今後の研究で援用可能な視座を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度進めた音楽や映画、舞踊、劇場文化等の専門誌の調査を継続し、その成果をまとめることを優先した。計画どおり、1930年代~40年代の舞台や映画で用いられた音楽に関する分析結果に基づく3件の口頭発表をしたのち、宝塚歌劇と映画音楽について、計2本の論文を執筆した(校了済・2017年5月刊行予定の1本含む)。 研究対象時期の録音文化をテーマとするワークショップに登壇することになったため、予定していた音楽ジャンル観に関するラウンドテーブルの開催は延期することとなったが、口頭発表・論文執筆の件数は予定を上回っている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内では軍部諸機関の資料調査や放送史資料を収集・分析するとともに、海外での資料調査を実施する。具体的には、台湾の国家電影資料館、国立台湾大学音楽学研究所ならびに上海音楽学院、上海電影博物館での調査を予定している。 また、本研究課題の最終年度に入るため、研究期間全体の成果公開として、音楽ジャンル観に関するラウンドテーブルを企画する。さらに2年間で収集・整理した資料を分析し考察をおこなった上で、研究成果を著書として出版する準備に着手する。
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Causes of Carryover |
当該年度に代表者主催のラウンドテーブルならびに台湾での資料調査をおこなう予定であったが、ゲストとのスケジュール調整や出張の日程調整の都合上、実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ラウンドテーブルおよび台湾・上海での資料調査を最終年度に実施することとし、その費用に充てる。
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