2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16649
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大島 幸代 龍谷大学, 龍谷ミュージアム, 助教 (60585694)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 仏教美術 / 石窟 / 護法 / 羅漢 / 高僧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国において多様な展開を示した護法神を種類別に個別に扱うのではなく、「護法神」という総体として捉え、護法神像の造形化の端緒と歴史的変遷の解明を意図したものである。その方法としては、1.護法神像および高僧像・羅漢像の作品調査、2.収集データの分析、3.成果の発表と検討という流れを基本としている。 本年度の作品調査としては、韓国・ソウル国立中央博物館の所蔵品および展示品のうち、中国南北朝時代の石造の仏像や碑像を中心に調査を行った。また、三星美術館Leeumが所蔵する銀製舎利容器に線刻された四天王像、高麗時代の絵画作品である釈迦三尊十六羅漢図の調査も行った。特に釈迦三尊十六羅漢像は、画面内に同主題の通例の作例には見られない胡人や俗服の人物像が描き込まれており注目され、今後詳細な分析を行う予定である。国内の作例については、奈良・法隆寺所蔵の十六羅漢像屏風、大阪・青蓮寺所蔵の伝玄奘三蔵取経図等、主に羅漢・高僧に関連する作品の調査を進めた。 作品調査と並行して、南北朝時代から隋唐時代初期にかけて信仰された「迦毘羅神」に関する文献・石刻記録の収集も行った。これらの分析を通して、迦毘羅神が特に南朝後期に信仰を集め、隋に入り河南省安陽市の霊泉寺大住聖窟において新たな意味づけを伴い造像され、その後、初唐に入ると、二天王像の中に吸収される形で姿を消していったことが明らかになった。当該内容は、既に学会発表の形で公開しているが、次年度以降に論文にまとめる予定である。また、山西省の雲岡石窟にみられる、髪を逆立たせる鬼形像についても、正体不明の護法神像として分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本国内の高僧・羅漢像の作品調査、および韓国に所蔵される中国の仏教造像の調査に重点を置いたため、中国における現地調査を次年度以降に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、護法神像および高僧像・羅漢像の作品調査を行い、そこで得られたデータを、護法神像の種類、性格と役割、地域性という3点を焦点に分析する。並行して文献・石刻資料における護法神信仰および高僧・羅漢信仰に関する文字資料の収集を行い、これらの検討を踏まえて研究成果を発表していく。中国南北朝時代から隋唐代の作品調査としては、江蘇省南京博物院、南京市博物館が所蔵する仏教造像、および棲霞寺石窟において現地調査を行い、国内では京都誓願寺蔵の鎌倉時代の高僧像、神戸太山寺蔵十六羅漢像等の調査を順次進めていく予定である。その際、中国の考古発掘等の最新の研究成果を反映して、問題解明に有効な作品が他にみつかった場合は、調査地等に変更を加えていく。
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Causes of Carryover |
日本国内で所蔵される高僧・羅漢像の作品調査を優先して行ったため、当初予定していた中国における現地調査を次年度以降の実施に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外における護法神像関連作品の調査(中国江蘇省の南京博物院、南京市博物館、棲霞寺石窟等)を7日間の期間で行う。加えて、国内の羅漢・高僧像の作品調査(大阪、京都、東京)、文献・石刻資料の収集(東京)を行う。また護法神信仰、羅漢信仰に関わる仏教美術関連図書、中国考古学関係図書、調査によって得られた写真データの保存のためのハードディスク等を購入する。
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Research Products
(1 results)