2015 Fiscal Year Research-status Report
1930年代フランスにおける抽象表現と自然観の相関関係についての研究
Project/Area Number |
15K16651
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Research Institution | Kyoto Saga University of Arts |
Principal Investigator |
山本 友紀 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 講師 (30537882)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術史 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シュルレアリスムとは異なる抽象芸術を展開した「アブストラクシオン・クレアシオン」グループに加え、自然界のモチーフを作品に導入していながら十分な研究の及んでいないピュリスムの活動を主な対象として、次の点を明らかにした。 キュビスムの芸術観の基盤となったベルクソンの思想はスペンサーの社会進化論に影響を受けたものであることを確認し、19世紀末の進化論的な思想まで遡りながら、1930年代の自然観の形成の過程を考察した。とりわけ、ル・コルビュジエとアメデ・オザンファンによるピュリスムが示した機械の美学が進化論をモデルとしていたことに注目し、20世紀初頭の前衛的な動きに「自然」の世界に新しい調和的な特質を見出そうとする姿勢がすでに内包されていたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集が当初予定していたように行えず、資料をデータ化する作業が遅れてはいるものの、それ以外の点においては順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の点において研究を行う。 1930年代の抽象芸術における自然観は、外界としての自然愛好、自然描写ではなく、生成原理のロゴスとしての自然のとらえ方が介入していた可能性を指摘できる。本研究ではこの点に着目し、抽象的な表現形式が、自然の理解を媒介することにより持ちえた社会・文化的な意味を究明する。
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Research Products
(2 results)