2015 Fiscal Year Research-status Report
6-8世紀の東アジア仏教美術史における釈迦信仰の諸相
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15K16652
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
田中 健一 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (00611188)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 仏教美術 / 釈迦 / 瑞像 / 舎利信仰 / 本生図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、六から八世紀の東アジア美術における釈迦信仰に関わる造形遺品(特に舎利・涅槃・本生図など)について、教学・実践・異文化交渉史などの視点を重視しつつ、造形・思想の変遷を跡づけようとする構想をもって進行している。今年度は(1)当該テーマに関連する写真資料・文献資料の収集整理と体系化に努めるとともに、(2)主要作品について作品研究を進めた。 (1)京都国立博物館寄託・京都報恩寺所蔵「釈迦如来および諸尊仏龕」を京都国立博物館において熟覧し、調書作成のうえ、細部にわたる画像資料を得ることができた。また、中国四川省・陝西省・甘粛省、韓国・国立中央博物館において、唐代~宋代を中心に関連作品画像データを収集した。 (2)上記の資料収集を踏まえ次の3テーマについて研究を進めた。まず①七世紀における舎利信仰の重要遺品である「長谷寺銅板法華説相図」について、霊鷲山信仰史上の位置を考察する論文を発表した。また②法隆寺所蔵「伝橘夫人念持仏」について、四川調査における作例収集を踏まえ、同図像と阿弥陀五十菩薩といった瑞像説話との接点を求める論文を発表した。また③法隆寺「玉虫厨子」の本生図を主な素材として、東アジアにおける本生図の特性を、仏身観の変化や「孝」思想との関連から考察し、その結果を人文科学研究所研究班(古典解釈の東アジア的展開―宗教文献を中心課題として、平成27年7月)、中国美術研究会(於京都大学、平成27年11月)などにおいて口頭発表し、仏教学・中国思想史・歴史学・考古学の諸研究者より様々な教示を得た。現在これらの知見を踏まえて論文化の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集に関しては、京都国立博物館寄託・京都報恩寺所蔵「釈迦如来および諸尊仏龕」の熟覧および資料写真の収集を予定通り行うことができた。また、海外所在作例に関しては、中国四川省・陝西省・甘粛省、韓国・国立中央博物館において、唐代~宋代を中心に関連作品画像データを収集することができた。これらの資料収集とその後の資料整理を通じて、本生図が、およそ初唐期を境に機能上変化する具体的なイメージを得ることができた。さらに、人文科学研究所研究班(古典解釈の東アジア的展開―宗教文献を中心課題として、平成27年7月)、中国美術研究会(於京都大学、平成27年11月)などにおいて口頭発表し、各方面の研究者からの教示をうることができたことは研究上、重要な進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には27年度の研究内容・方法を継続し、本研究課題に沿った考察をより広く深く、体系的に展開したい。関連史料収集に関しては、27年度に収集した仏伝・本生図・涅槃図について、綿密な整理をおこないつつ、中国・甘粛省など本生図関連の重要作例の実見に努める。また、27年度に一部着手した、東アジアにおける本生図の受容と展開に関する考察を継続し、学会発表(国際美術史学会・9月に開催予定)などの機会を利用し、近接諸領域にも学びながらより多角的な検討を行い、年度内の論文発表を目指す。
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