2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16653
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
村田 隆志 大阪国際大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (80625591)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近代南画 / 画塾 / 作風 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目を迎えた本研究の遂行に際しては、すでに入手した文献の精読と撮影した資料の解読作業を進めた。松林桂月の画塾、桜雲洞の実態について理解し、その上で旧蔵資料の検討を行うためには、逐年順での事項の把握が必要不可欠であると考え、今年度に調査した桂月の日記や昨年度に入手した画塾展の図録を活用しながら詳細な年譜を作成した。これにより、桜雲洞での教育活動がどのように行われていたのか、また塾展の開催の様子の大要を把握することができたが、これは日本近代美術史に新たな視点を提供するものであるといえる。従来の日本近代美術史は、東京美術学校・京都絵画専門学校のような、学校で日本画を学んだ「学校派」を中心として語られがちであり、画塾で日本画を学んだ「私塾派」についての研究は必ずしも深まってこなかったが、その状況に一石を投じる成果を得ることが予測される。
また、桜雲洞関係資料を複眼的に見つめ、理解するためには当時の南画壇の状況を理解しておく必要がある。近代南画の研究は、研究蓄積が極めて乏しい分野であるため、拠るべき資料すら定かではないような状況にあったが、この問題については昨年度に収集した資料を用いて多くの知見を得ることができた。
また、今年度は門弟遺族からの情報提供や、現存水墨画作家からの作品情報提供を得て、その調査を実施することができた。これらの成果も年譜作成に反映しており、研究を進展させている。また、機器の取り扱いについても今年度で習熟した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で用いる関連資料は桂月独自の特異な書風で綴られるため、判読が難しく、想定以上の時間を要している。ただし、研究遂行者の解読能力向上により、この問題についてはクリアできる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎えるため、各方面と協力しながら撮影、解読とデータ化を進め、報告書の刊行を目指すものとする。
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Causes of Carryover |
日記等の既撮影資料の解読を優先し、旅費を使用する調査の回数を減少させたため。また、報告書完成までの見通しを確定することを優先させたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大学の夏季休暇を活用し、各所蔵先への調査を実施する。またこれらの調査は、調査補助者と共に実施し、効率化を図る。
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