2016 Fiscal Year Research-status Report
住吉派の総合研究-江戸時代のやまと絵の動向と関連して-
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15K16656
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
宮崎 もも 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (10416266)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 美術史 / やまと絵 / 住吉派 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目にあたる2016年度は、住吉派の画風の広がりについての調査・研究を中心に進めた。特に、住吉派の白描物語絵に注目することで、具体的に住吉派の画風の広がりや展開について考察を深めることができた。 まず、早い時期の住吉派の白描物語絵の特徴を明らかにするため、初代の住吉如慶の周辺絵師によって描かれた白鶴美術館蔵「源氏物語画帖」、徳川美術館蔵「源氏物語画帖」の調査を行った。調査で得た画風の特徴を手がかりに、同じ工房によって描かれたと考えられる白描の物語絵を展覧会図録や売立目録から見出した。 次に、二代目の住吉具慶の周辺絵師による白描物語絵や、奈良絵本と言われる絵入り本の白描挿絵を調査し、住吉派における白描物語絵の画風展開を明らかにした。 続いて、江戸時代後期に目を向け、七代目の住吉弘貫や、その弟子たちの間で、白描の物語絵が再び盛んになることに注目し、江戸時代前期の作例との共通点や相違点を明らかにした。また、住吉派作例だけでなく、田中訥言筆「藤原師長図」(個人蔵)「竹取物語図」(個人蔵)、岡田為恭筆「納涼図」(根津美術館蔵)など、同時代に白描画を得意とした他の絵師たちの作例も調査することで、住吉派の特色をより明確にした。 こうした調査・考察の成果を、大和文華館で開催した特別展「白描の美」(2017年1月日~2月19日)の図録や、美術史学会西支部大会「白描画再考-日本絵画史におけるその意義-」(2017年2月19日、於:大和文華館)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作品調査に関しては、特別観覧、展覧会観覧によって、国内の住吉派作品を多く見ることができ、その画風の広がりについての考察が進んできている。そして、その成果を展覧会やシンポジウムで公開・議論することができた。 文献調査に関しては、去年に引き続き行っており、絵画作例データの蓄積は進んでいる。住吉派の事績データの蓄積が遅れ気味であるが、全般的には順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、作品調査と文献調査を進め、住吉派のデータの蓄積を行い、その成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
年度末に、文献調査のための出張を予定していたが、館の急な業務のため、都合がつかなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該出張については、2018年度に行う。
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