2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16657
|
Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
古川 攝一 公益財団法人大和文華館, その他部局等, その他 (70463297)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 図像 / 白描 / 仏教絵画 / 歌仙絵 / 中世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安時代後半以降、盛んに集積される白描図像を通して、同時代の仏教絵画を捉え直すことを試みるものである。研究初年度に当たる平成27年度は、各美術館・博物館が発行する所蔵品目録、展覧会図録あるいは先行研究を手がかりに、対象となる白描図像の抽出を行いつつ、展覧会に出陳される白描図像について可能な限り実見した。幸い、東京国立博物館で開催された「特別展 鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」をはじめとして、白描図像の優品が出陳される機会が多かった。描線や紙質、白描図像に見られる「高山寺」印についても比較考察を行うことが出来た。 一方、本研究は図像のみを対象とはしていない。鎌倉時代には「時代不同歌合絵」や「釈教三十六歌仙絵」のような白描歌仙絵、あるいは王朝物語を絵画化した白描物語絵など、数多くの白描画が生み出された。これらの中で白描図像がどのような位置にあり、どのような影響関係があるのかを考察することで、白描絵画史を構築することも目指している。中でも「釈教三十六歌仙絵」は、高僧図像との影響関係が指摘されているが、具体的な僧侶の図像は「時代不同歌合絵」と一致することが先学によって明らかにされている。しかし、両者の描線の質は異なっており、「釈教三十六歌仙絵」は白描図像に近い描線を持つ。白描表現を考察する上で、あるいは、図像と歌仙をつなぐ手がかりとして「釈教三十六歌仙絵」は重要な作例といえる。今年度は、東京国立博物館・東京芸術大学に所蔵される作例を、模本も含めて調査を行った。 文献調査では、表現としての白描にどのような見方がなされていたのかを知るため、公刊されている日記類から関連する記述の抽出を始めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
展覧会での実見を含め、白描図像の優品を調査する機会に恵まれたため。また、図像のみならず歌仙絵や物語絵についても視野を広げて考察を行うことが出来、さらには所蔵機関の学芸員や所蔵者に、次年度以降の作品調査への理解を得ることが出来たため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は対象となる作例の情報収集に時間を費やしたため、次年度は積極的に作品調査を行っていく。併せて、公刊されているものが中心となるが、日記や典籍目録などから、白描に関する記事に抽出を行う。
|
Causes of Carryover |
東京方面への出張を予定していたが、本務先の業務が急遽入ってしまったため、一回分の出張旅費が次年度使用額として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該出張を次年度に延期したため、問題なく使用できる見込みである。
|
Research Products
(1 results)