2016 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Study on Transboundary Activity of Chosen Manchuria filmmakers in Pacific War
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15K16669
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
李 敬淑 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (80723048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 朝鮮映画 / 満洲映画 / 戦時下日本映画 / 植民地映画 / 李香蘭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の一年目の活動は、主に国内外の関連資料を収集することで、研究の土台を作ることであった。その結果、日本国内の戦時下映画関連資料の収集は勿論、韓国および中国側の新たな発掘資料を入手することができ、課題関係の小論文(2件)を発表・掲載することとなった。 二年目(最終年度)の活動は、海外研究調査を続けるとともに、研究成果を公表していくことであった。主な研究成果実績としては、発表2件、論文掲載2件があげられる。「原節子再論(2)――表象の形成と屈折」(宮城学院女子大学『日本文学ノート』51号、2016年7月)は、四方田犬彦の研究(『日本の女優』)が代表されるように、李香蘭と対の関係で論じられてきた原節子について新たなアプローチを試みた連続研究の一つである。それによって戦時下の李香蘭と原節子を同時に射程に入れて論じることが出来た。 また、宮城学院女子大学人文社会科学研究所シンポジウム「満洲の残照――映画、文学、教育の光景」にて、各々李香蘭と満洲映画について講演・発表を行い、その発表成果に基づいて研究論文「満映という幻の舞台――雑誌『満洲映画』と李香蘭」(『人文社会科学論叢』26号、2017年3月)を掲載・公表した。なお、2017年度7月には日本国際学会にて朝鮮における李香蘭表象の受容に関する発表が確定されている。 これらにより、ときに山口淑子、またときにシャーリ・ヤマグチという名で呼ばれてきた李香蘭(リコウラン)の、朝鮮における李香蘭(イヒャンラン)としての全貌が明らかになったと言える。李香蘭の映画活動は日本・中国・アメリカという三つの大国のみならず、大日本帝国の植民地であった朝鮮や台湾まで広がっていたため、以上の成果は、植民地の映画観客たちにも愛された李香蘭(イヒャンラン)のその知られざるもう一つの姿を発見したことを意味するだろう。
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