2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16671
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
増田 展大 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (70726364)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディア論 / 映像技術 / 生命科学 / 写真 / 映画 / アニメーション / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目に当たる本年度の研究は、生命科学の実践を歴史的に検討しつつ、それらとメディア論との接合を試みることで進められた。前年度に引き続き、その具体例かつ出発点となったのは、現在におけるバイオアートの実践である。具体的には生命科学者によるアートの実践を調査すると同時に、その歴史的な系譜を20世紀前半の生命科学に辿る文献調査などをおこない、結果として、従来に注目されることの少なかった映像技術と生命科学との歴史的な交差を明らかにすることができた。以下、その研究実績を口頭発表と調査活動、執筆活動の順に詳述する。 まず口頭発表は、韓国・ソウルで開催された国際美学会、また岡山大学で開催されたシンポジウムでおこなった。特に後者では、現在の映像技術による微視的な生命現象の可視化を20世紀前半にまで遡って再検討し、同時代のシネマトグラフなどとの関係を明らかにした。またその際、同様の事象を分析対象としている現在のフェミニズムの言説を紹介しつつ批判的な検討を加え、メディア論や美学の専門家と建設的な議論を展開することができた。 次に上記の研究内容に関連するアートの実践として、中国・上海や茨城県で開催されたメディアアートやバイオアート作品の見学調査をおこなった。特に後者については、京都精華大学で開催された講演会で報告をおこない、視覚文化論や生物工学の専門家と議論を交わすことができた。その内容は、同大学の作品集巻末に掲載されている。 最後に著作物として雑誌での論文執筆や翻訳、二冊の共著本、そして単著の出版をおこなった。とりわけ単著の内容には、生命科学をめぐる映像技術論、とりわけ前年度から調査を継続してきたアニメーションをめぐる現在のメディア論を取り込むことができた。本書の内容は以前から進めてきた研究の成果でもあるが、次年度以降も生命科学のメディア論的展開を試みるうえで重要な架橋として位置付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に目標としていた研究調査や発表をある程度まで進めることができたのと同時に、関連するアーティストや研究者との交流を深めることができ、さらに著作物の発表と来年度以降の公開についても目処がついたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度に当たるため、現在までの研究成果の総括を進めると同時に、本年度におこなった文献や資料調査の公表を重点化することで研究を進める。そのために、これまで以上に関連する研究分野や研究者との関わりを強め、口頭発表だけでなく著作物の執筆機会を増やすことにしたい。具体的には、来年度以降に刊行予定の著作での分担執筆が進められており、これが主な研究成果の発表となる予定である。
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