2016 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の視覚文化におけるプレ・シネマとしての歴史的機能
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15K16673
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上田 学 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, その他(招聘研究員) (80546143)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 映像学 / 映画史 / 映画学 / 表象文化論 / 視覚文化 / データベース / 地域研究 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は幻燈と博覧会に関して、前年度から継続している明治期資料の調査を実施した。その成果にもとづき、第9回恵比寿映像祭シンポジウム「シネマトグラフ日本伝来―稲畑勝太郎とリュミエール」(日仏会館、2017年2月)において、プレ・シネマに関する招待講演をおこない、幻燈や写し絵等の日本のスクリーン・プラクティスと、リュミエール映画との関係について論じた。また共著『浅草文芸ハンドブック』(勉誠出版、2016年5月)において、浅草における明治期の幻燈製造業と、後の映画館街の形成との関連について指摘した。さらにプレ・シネマの研究として、本研究に新たな二つのテーマを接続させた。一つは無声映画の弁士の口頭芸に関する研究である。ボン大学が所蔵する活弁SPレコードを対象として、特に浪花節と弁士の関係についての調査を実施し、次年度に弁士の口頭芸の起源を明らかにするための基礎研究をおこなった。もう一つは地方における映画館と劇場との連続性である。四国において、スザンネ・シェアマン、ローランド・ドメーニグとともに映画館主に聞き取りを実施し、その成果の一部をCultural Typhoon in Europe(ウィーン大学、2016年9月)において、"Relationships between Silent Film and Movie Theatre in Japan during the 1910s"として口頭発表した。また聞き取りの成果はオーラル・ヒストリーとして「日本映画オーラル・ヒストリー第三回「藤本一二三」」(シェアマン、ドメーニグと共著、『言語文化』34号、2017年3月)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幻燈と博覧会という明治期のプレ・シネマに関する、資料の収集と整理は順調に進んでいる。その成果にもとづき、今年度は口頭発表を実施し、次年度の論文執筆のための準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の資料調査にもとづき、従来の幻燈と博覧会という研究対象に加えて、(1)無声映画の弁士の口頭芸と浪花節、(2)地方における映画館と劇場との連続性という、新たな二つのプレ・シネマのテーマを本研究に接続させた。これによって、より総合的に日本のプレ・シネマを捉えることとが可能となる。
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