2016 Fiscal Year Research-status Report
山東京伝の江戸座俳諧に関する研究ー柳沢米翁・本多清秋ら大名俳人の俳諧交友の解明
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15K16677
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿島 美里 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (00609068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世文学 / 江戸座俳諧 / 山東京伝 / 柳沢米翁 / 亀成 / 菊堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目の今年度は、大和郡山藩主柳沢米翁、松代藩主真田菊貫ら大名俳人と係わりの深い江戸座俳諧宗匠亀成と菊堂との係わりを明らかにし、その成果を学会発表で公表した。菊堂が亀成十三回忌追善集に出版した『妙智力』は、大名子弟と江戸座俳諧の様相をよく示しており、両者の繋がりによって江戸文化が形成されていく経緯を読み取ることができた。『妙智力』から、菊堂の後援者が松代藩主真田菊貫であり、その親交から菊貫の家臣である松代藩士菊円といった人物の助力により、十三回忌追善句碑が信濃善光寺に建立された。さらに『妙智力』の成立過程が柳沢米翁の『宴遊日記』に詳細に記述されており、刊年が安永九年であることが判明した。加えて『宴遊日記』では、米翁が菊堂の六十の賀を祝っており、ここから菊堂の生年が享保五年であることが分かった。そして本書には尼崎藩主松平忠告(俳号亀文)も句を寄せており、これらの句から、亀成が尼崎藩上屋敷前の南八丁堀に住み、業俳として大名子弟を庇護者に持ち、点者として生計が立てられるように俳諧活動を行っていたのである。 さらに亀成は俳諧宗匠だけでなく、見立絵本作者でもあり、亀成作画になる『見立百化鳥』は、多くの山東京伝の作品に影響を与えており、同時代の戯作者朋誠堂喜三二も亀成を俳諧の師としていた。ここから江戸座俳諧と京伝の直接の繋がりが見いだせ、江戸座俳諧の交流をもとに戯作が生みだされた経緯の一つが判明した。亀成という人物から戯作界と江戸座俳諧が結びつき、俳諧交友が江戸文化を生み出す重要な要因の一つであることの明証となった。 また、亀成の名も見える『東風流』巻一の翻刻を行い、江戸座俳諧の位置付けについて考察を進めた。 加えて『山東京伝全集第十三巻 合巻8』の『黄金花万宝善書』の翻刻を担当し、山東京伝が係わった江戸文化圏を解明するための知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画に則し、柳沢米翁・真田菊貫と係わりの深い江戸座俳諧宗匠の菊堂と亀成について大名との交友関係を解明することができ、おおむね順調に進展している。本年度の調査で亀成が戯作界と俳諧を結ぶ重要な人物であることが分かり、山東京伝の江戸座俳諧との繋がりについて分析を進めることができた。柳沢米翁の『宴遊日記』には、米翁が関係する江戸座俳諧宗匠や大名の様子が詳細に記述されており、これにより『妙智力』の刊年、菊堂の生年が判明した。米翁の『美濃守日誌』、『宴遊日記』、『松鶴日記』等の日記は江戸座俳諧に係わる記述が多く、大名と江戸座俳諧宗匠との係わりを解明するための貴重な資料であり、今後もより詳細に内容を調査する必要性があるといえる。資料収集、書誌調査を柳沢文庫・島根県立図書館・天理大学附属天理図書館・国会図書館等で行い、資料の読解・分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの調査・資料収集・データベース化によって得られた成果をもとに、柳沢米翁・本多清秋・真田菊貫ら大名俳人と江戸座俳諧宗匠存義・秀国・菊堂・亀成らの係わりを明らかにし、これを取りまとめ成果の発表を行う。柳沢米翁の『宴遊日記』、『松鶴日記』、菊堂の『妙智力』、本多清秋の『丁々窩発句集』等の資料を中心に調査を・分析を行ってゆく。これにより、大名の俳諧交友を通じて生成された江戸文化圏の考察を行い、山東京伝と江戸座俳諧との係わりを解明する。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく中で、必要となった購入予定の書籍が使用額の残高を上回っていたため、次年度での購入にあてることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分の助成金と合わせて、購入予定の書籍代に使用する予定である。
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