2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16678
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西田 一豊 千葉大学, 大学院人文社会科学研究科, 特任研究員 (00571621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現代文学 / メディア研究 / 福永武彦 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は神奈川近代文学館、山梨県立文学館、日本近代文学館といった公立の資料館・記念館へ赴き福永武彦の直筆書簡資料の調査を行った。これは研究の目的にあった「散逸資料」の調査に基づくもので、各文学館に所蔵されている書簡資料を調査し、その現状を確認するとともに広く出版されているものではない書簡資料から福永武彦のテクスト生成に関連する項目・個人史がテクストに与える要素を調査した。調査過程では多くの書簡資料に目を通したが、未だ調査が行き届いていない資料も残されており、今後の更なる調査の必要がある。また福永武彦の『愛の試み』に関して同時代の諸テクストとの比較を行った。『愛の試み』が執筆された当時、女性・青年を対象とした生き方講座ないしは人生指南を行う書籍が多数出版されており、『愛の試み』もまたそうした書籍の一つであること、そしてそうした流行の産物でありながら福永武彦独自の見解などが見られることを明らかにした。こうした調査・考察については福永武彦研究会2017年1月例会で発表を行った。また福永武彦の最初の長編小説である『風土』については登場人物の一人である桂昌三を中心に三重化された反復構造を持つ小説であること、および『風土』が橋川文三『日本浪曼主義批判序説』で指摘しているようなロマン主義小説であるとの見解を論文「福永武彦『風土』論―帰郷とロマン主義」にまとめ『千葉大学人文社会科学研究』第34号に掲載した。また、こうした研究活動を通じて福永武彦の書誌年表の必要性を感じ、作成に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
散逸資料の調査は順調に進んでおり、文学館を中心に書簡資料の調査を計画通り行うことができた。現在北海道道立文学館に福永武彦の資料は中心的に集められているが、それ以外の公立機関に所蔵されている資料については概ね調査が終了したと考える。またテクストの精読についても、初出資料まで遡り発表された当時の状況を鑑みて考察を行うことができた。またその過程で書誌年表の作成にも着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、散逸資料調査として北海道立文学館への調査とその他公立機関に残る散逸資料の調査を行う。また初出年月による福永武彦の書誌年表を完成させると同時に、文化史的位相を研究する本研究事業として昭和30年代の雑誌メディアと福永武彦の諸テクストの関連、同時代状況を通じてテクストの読みのどのような偏差がもたらされるかといった論点を論文にまとめる予定である。また今年度は最終年度であるため、これまでの調査・研究をまとめた報告書の作成を行う。
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Causes of Carryover |
当初北海道立文学館への調査予定を立てていたが、北海道立文学館ではなく山梨県立文学館、神奈川近代文学館、近代文学館という比較的近距離にある公立資料館への調査を重視したため旅費を中心に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は昨年度調査に赴かなかった北海道立文学館へ再度調査を行い、また未調査の他の公立資料への調査を行う計画である。
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Research Products
(1 results)