2015 Fiscal Year Research-status Report
平安・鎌倉期の大嘗祭芸能と宮廷の御神楽の基礎的研究
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15K16679
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中本 真人 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30734678)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大嘗祭 / 大嘗会 / 宮廷の御神楽 / 清暑堂御神楽 / 神楽歌 / 和歌 / 芸能史 / 歌謡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、研究計画に従って研究を進めると同時に、雑誌論文および口頭発表の両方に渡って研究成果を公表することができた。以下、当該年度発表の雑誌論文に基づきつつ、研究実績の概要をまとめる。 最初に「音楽説話の多氏―御神楽の拍子の家の形成をめぐって―」(説話文学会『説話文學研究』50号、平成27年10月)では、院政期以降、御神楽の拍子の家として活動した多氏について、文献史料に基づいて、その活動の実態を明らかにした。この研究により、多氏は、11世紀後半に出た多節資より、神楽歌の拍子の家としての地位を固めたことが判明した。また院政期から中世にかけて宮廷儀礼に関わった楽家の成立過程の一端も解明することができた。 次に「大嘗会和歌の神楽歌と清暑堂御神楽の変容」(慶應義塾大学藝文学会『藝文研究』第109号第1分冊、平成27年12月)では、大嘗会和歌の中でも、特に実際の機能が不明であった神楽歌について検討した。大嘗会風俗歌十首は、辰・巳日の儀に奏楽される八首が、楽を新作する楽所に下されたのに対して、稲舂歌・神楽歌は楽が新作されなかったとみられることが明らかになった。 3つ目に「院政期の大嘗会と楽所 ―風俗歌舞の制作と奏楽をめぐって―」(日本歌謡学会『日本歌謡研究』55号、平成27年12月)では、院政期の大嘗会の芸能の具体的な姿を確認するとともに、同時期の芸能環境についても整理した。特に天仁元年の大嘗会に注目し、大嘗会の楽所では楽行事を中心としつつ、悠紀方・主基方の風俗歌舞の教習が行われ当日奏されたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に基づいた学会における口頭発表、および論文執筆を行っており、すでに一部は学会誌にも発表されている。また本研究課題の成果に基づいた一般書の出版計画も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、大嘗祭の芸能の実態を具体的に明らかにする作業を進める。すでに進められている清暑堂御神楽に加えて、ほかの芸能の目的と内容を文献史料に基づきつつ解明する。
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Causes of Carryover |
本研究課題の研究成果として、平成28年度中に一般書の出版を進めている。出版社が東京にある関係から、研究上の打ち合わせにかかる費用も平成28年度にわたって確保する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題に基づく一般書の出版に必要な研究上の打ち合わせにかかる旅費として執行する計画である。
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