2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀のアメリカ文学における日本の民話の受容と意義
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15K16697
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
CARDI LUCIANA 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 特任講師 (00725632)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本民話 / 童話 / 比較文学 / 20世紀アメリカ文学 / 日本文学 / 狐 / ジェンダー構築 / アジア系アメリカ人のアイデンティティ問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年9月に20世紀のアメリカ文学における日本の民話の受容と意義に関する研究を再開した後、青山学院大学で開催された国際ワークショップ『Japan Pop Goes Global: Japanese Pop Culture on Aesthetics and Creativity』で口頭発表を行った。また、2018年3月に一次資料を収集するため、アメリカおよびヨーロッパの様々な図書館を訪れた。 まずはテキサス大学オースチン校ハリーランサムセンターを訪れ、同センターが所蔵するジョン・ルーサー・ロングの未発表の作品や手紙の中で日本と関係のあるものを探し、多数の日本民話のアダプテーションを発見することができた。その後、アメリカ合衆国カンザス州ローレンス市に本部を置くカンザス大学のスペンサー図書館を訪れ、SF小説家コードウェイナー・スミスの作品における東アジアの民話の影響について調査を行った。また、同大学の教授であるSF女性作家キジ・ジョンソン氏に会い、彼女をインタビューすることができた。インタビューの中で、『今昔物語』の説話に基づいている小説を執筆したジョンソン氏は、自分の作品における日本の民話やおとぎ話の役割について考察した。その後、ヨーロッパへ移動し、ロンドンの大英図書館のアーカイブでアンジェラ・カーターの日記やノートなどを調べて、日本の民話の影響に関わる資料を発見した。20世紀後半の米英文学における日本民話の受容を深く理解するため、西洋の童話のみならず、日本の民話からもインスピレーションを受け、文学的および文化的な境界を横断したカーター氏に関する検討が欠かせないと考えられる。 研究の再開から経過した7カ月間でそれぞれの図書館で収集された資料は、今後の研究課題に大変役立つもので、研究論文、学術専門書(今は執筆中)、研究発表に利用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産および育児休業に伴う事情、大学における研究・教育活動などにより、研究資料の収集等を行うための海外出張が計画していた期間より遅くなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、平成30年度は20世紀後半から現在に至るまでのアダプテーションに焦点を当てて、Nora Okja Keller、Hiromi Goto、Larissa Laiなどのアジア系アメリカ人作家およびアジア系カナダ人作家による東アジアの民話の改作を分析する予定である。特に、その作家が描写する狐の姿とアジア系アメリカ人のアイデンティティ問題の関連性を明らかにしたい。また、アメリカのグラフィックノベルの中で欧米の童話と共に次第に日本の民話が再創造される現在の傾向を分析する予定である。具体的に述べると、Fairy-Tale Studiesの視点からNeil GaimanとBill Willinghamによるアダプテーションについて考察したい。 新しい資料の収集および分析を行う一方、様々な方法で研究成果を公開する予定である。昨年は神奈川大学の教授である村井まや子氏と共に、神奈川大学で共催者として開催した国際学会「 Re-Orienting the Fairy Tale: Contemporary Fairy-Tale Adaptations across Cultures 」の成果を研究書として出版する予定である。そのため、研究書の編集作業および序論の執筆を行う予定である。さらに、日本大学で開催される日本比較文学会の全国大会(2018年6月9-10日)において、研究成果に関する口頭発表を行う予定である。また、2018年6月30日に英国ノリッチに本部を置くイースト・アングリア大学で開催される「Angela Carter and Japan」という国際シンポジウムに参加し、口頭発表を行う予定である。両方の口頭発表はすでに受理され、決定された。
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Causes of Carryover |
出産および育児休業に備え、平成28年7月1日から一年間研究を中断したため、次年度使用額が生じた。平成30年度は書籍の購入および、作成中の英語の学術専門書のプルーフリーディング、国内外資料調査、研究成果の口頭発表を目的とした出張に使用する予定である。
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