2016 Fiscal Year Annual Research Report
Representation of Consciousness in First-person Autobiographical Novels
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15K16698
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中尾 雅之 鳥取大学, 地域学部, 講師 (00733403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一人称自伝小説 / 意識描写 / 物語る私・体験する私 / 視点 / ダイクシス表現 / 意識のレベル(知覚・概念) |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果は以下のとおりである。 (1)前年度に引き続いて、一人称自伝小説の意識描写を分析する際に必要な視点を、物語論、認知言語学、認知心理学等の知見を参考にしながら検討した。今年度は、特に従来等閑視されてきた一人称自伝小説における2つの「私」(物語る「私」と体験する「私」)の実存的な関係(時間的・心理的な継続性)が、語りのスタイル(特に意識描写の言語形式)へ及ぼす影響について考察した。
(2)2つの「私」の実存的な関係や自伝を語る動機に着目しながら、サッカレーの悪漢自伝小説『バリー・リンドン』の意識描写の分析を行った。ここでは特に、サッカレーが悪党であるバリーを本当の「悪」らしく描くために、認識様態の動詞を巧みに用いながら、彼の自己欺瞞の意識を描いていることを指摘した。これらの分析結果については、2016年(7月27日-7月30日)、イタリアのカリアリ大学で開催された国際文体論学会PALA2016(Poetics and Linguistics Association)において口頭発表した。またその発表内容は、PALA 2016 Online Proceedings に掲載されるに至った。
(3)18世紀・19世紀の英国一人称自伝小説のテクスト(例:デフォー、スウィフト、スターン、スモレット、ブロンテ姉妹、ディケンズ、サッカレー等)をデジタル化し、コンコーダンスソフト(AntConcやCasual Conc等)を用いて歴史的・量的な観点から意識描写の分析を可能にする環境を整えた。今後はこれらのデータを利用しながら、一人称自伝小説における意識描写の歴史的変遷を考察していく必要がある。
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