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2015 Fiscal Year Research-status Report

海の彼方の大アイルランド:現代大飢饉小説の環大西洋的越境性を政治的に読み解く

Research Project

Project/Area Number 15K16708
Research InstitutionYasuda Women's University

Principal Investigator

田多良 俊樹  安田女子大学, 文学部, 准教授 (40510467)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywordsアイルランド大飢饉 / 記憶 / 移民 / 帰郷
Outline of Annual Research Achievements

平成27年度は、本研究の理論的土台の確立を目指して、カナダとアメリカに流入したアイリッシュ・ディアスポラに関する先行研究を収集し分析した。特に、カナダが移民先として選ばれた歴史的理由とともに、高度な多元文化主義社会となっている現代カナダにおけるアイルランド系カナダ人の歴史的・社会的状況を精査した。
特に、平成28年3月にアイルランド国立図書館で行った資料収集は、本研究の遂行上、非常に有益なものとなった。この際、大飢饉当時の有望な移民先として、アメリカとカナダが別々にではなく、同じ「北米」として宣伝されていることが明らかになった。
また、本年度10月より、アイルランド系カナダ人作家 Janes Urquhart の小説 Away (1997) について考察を続けている。アイルランドとカナダの両国を舞台とし、主人公の一族にまつわる秘密が、祖国への遡行と並行して開示されていくという本小説の構造自体に、アイルランドとカナダの歴史的な関係が反映されている。それは、単に大飢饉当時の移民元と移民先という関係にとどまらない。「自治領」のとして成功するカナダと自治権獲得を目指すアイルランド、そしてカナダ独自のアイデンティティを再構成する際に、独立アイルランドを参照するカナダといった関係である。このように歴史的なナショナリズムの文脈においてアイルランドとカナダは相互参照を続けており、Away における「アイルランドへの帰郷」もひとまずはこの文脈において読むことができると仮説している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

大飢饉と移民と記憶をめぐる先行研究の収集と分析は、本研究の理論的土台を確立するうえでは十分に実施できた。また、本研究課題の第1対象である Jane Urquhart についても、上記のように一定の分析・考察が進んでいる。
しかしながら、平成27年度の研究実施計画の中で進捗が遅れいる部分がある。たとえば、Uquhart に関しては、出生国カナダで執筆を続けているという固定性が「アイルランドへの帰郷」というテーマ設定にいかなる影響を及ぼしているかという点について伝記的側面から検討する予定であったが、彼女の伝記的背景に関する先行研究が想定外に少なかったため、いまだ本格的に検討できていない。また、カナダのオタワにあるLibrary and Archive Canadaにおけるアイルランド系カナダ人に関する資料調査も、他の業務のスケジュールの影響で実施できなかった。
このように、平成27年度研究実施計画のうち、実施できていないものが残っているため、進捗状況はやや遅れていると評価せざるを得ない。

Strategy for Future Research Activity

研究の理論的土台の確立は果たせたので、今後は個別の作家・作品について研究を進めいてく。予定よりも遅れている Urquhart に関する伝記的研究を進めるために、資料収集の対象範囲を広げ、雑誌やウェブ上に公開されたインタビュー記事を含める。また、Urquhart自身にメールインタビューを試みる。
このようにして伝記的研究の成果が出たら、Urquhart論をしかるべき場所で発表する。当初予定していた Canadian Association of Irish Studies 年次大会には間に合わない可能性もあるので、その場合には、IASIL-Japanや日本アイルランド協会の学会誌に投稿する。
平成27年度中に実施できなかった、Library and Archive Canadaにおける資料収集は、平成28年度の夏季休業期間あるいは春季休業期間に実施する予定である。
その後は、研究遂行計画に記したとおりに作家・作品研究を進めていく予定であるが、不測の事態が生じた場合は、研究の順序を入れ替えて、全体としての研究成果の量と質を担保する。

Causes of Carryover

当初、カナダはオタワにある Library and Archive Canada において、アイルランド系カナダ人に関する資料調査を行う予定であったが、他の業務の影響で、これを実施することができなかった。そのため、旅費が残り、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

上記の資料調査を、平成28年度の夏季休業期間中あるいは春季休業期間中に実施する予定である。この調査に伴う旅費に使用する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Book (1 results)

  • [Book] ジョイスの罠―『ダブリナーズ』に嵌る方法2016

    • Author(s)
      金井嘉彦、小島基洋、桃尾美佳、奥原宇、滝沢玄、丹治竜郎、田多良俊樹、横内一雄、南谷奉良、坂井竜太郎、小林広直、戸田勉、平繁佳織、木ノ内敏久、中嶋英樹、河原真也、吉川信
    • Total Pages
      160-178
    • Publisher
      言叢社

URL: 

Published: 2017-01-06  

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