2017 Fiscal Year Research-status Report
海の彼方の大アイルランド:現代大飢饉小説の環大西洋的越境性を政治的に読み解く
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15K16708
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
田多良 俊樹 安田女子大学, 文学部, 准教授 (40510467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アイルランド大飢饉 / 記憶 / 移民 / アイルランド / アメリカ / 歴史改変小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、これまでの研究成果を、「文芸共和国の会」におけるシンポジウム「天/人/災」にて発表した。本会は有志によって運営されており、学術団体ではないが、研究者だけでなく、広く一般市民にも門戸を開いており、定期的に「異分野遭遇型・市民参加型学術イベント」を開催している。この意味で、科研費による研究成果を国民に還元するという点については、一定の貢献ができたと考えている。 また、本年度は、研究実施計画に即して、Colum McCann の TransAtlantic の研究を進めた。1919年の大西洋無着陸飛行と、1848年のアイルランド大飢饉、および1998年の北アイルランド和平という3つの物語が絡み合う歴史改変小説である本作品が、大飢饉をアイルランドとイングランドの2国間関係においてではなく、環大西洋的な関係性からとらえなおそうとしている点を明らかにした。 なお、TransAtlanticに関する考察は、平成30年7月に開催される国際学会IASIL 2018において口頭発表することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の研究実施計画どおり、Colum McCannに関する研究を進めることはできた。しかし、以下の2点を理由に全体的な進捗状況は「やや遅れている」と評価せざるを得ない。 第1には、Jane Urquhart に関する論文の掲載が果たせていないこと。 第2には、カナダにおける資料収集が本年度もできなかったことである。 以上のように平成28年度の研究実施計画のなかで未了のものが残っているため、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
Jane Urquhart に関する論文は、一度査読の受けて掲載不可とされたため、査読コメントを反映させ、ブラッシュアップする。さらに、再投稿の際には、発表媒体の変更も視野に入れつつ、本研究課題の最終年度中には掲載されるようにしたい。 カナダにおける資料収集については、平成30年度夏季に実施する予定である。ただし、それが果たせない場合は、最近アイルランド系カナダ移民に関する良質な研究書の出版が相次いでいるため、これらの研究書に当たることで、資料不足を補うことも検討する。
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Causes of Carryover |
カナダにおける資料収集に関わる経費が、資料収集を実施できなかったため、残っている。また、Colum McCann に関する研究書も想定していたより少なかったため、図書購入費にも繰越が生じる結果となった。 カナダにおける資料収集を次年度内に実行し、また研究図書についても継続的に情報集の上、計画的に購入していく。
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