2015 Fiscal Year Research-status Report
グロテスク文学としてのフランス16世紀前半の架空譚
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15K16715
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩下 綾 慶應義塾大学, 法学部, 講師 (40633821)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ルネサンス / 仏文学 / 文章技巧理論 / ジャンル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、装飾芸術のジャンルとしてイタリアで始まった「グロテスク様式」が、フランス16世前半の文学において果たした役割を、ラブレー作品を中心とした架空譚の読解を通して明らかにすることを目的としている。 初年度となる平成27年度には、16世紀前半の文章技巧理論における「ファンタシア」の概念の調査と、年度半ばのフランス滞在で資料収集を行った。その研究成果の一部として、以下に挙げるような国内外の学会で口頭発表を行った。 文学においてグロテスク様式に深く関連する「異形のもの(こと)」の描写を分析する手がかりとして、ラブレー作品から「奇妙な(estrange)」という語を抽出し、語の用法と概念の分析を行った。その結果をトリノ大学で開かれた国際ラブレー学会において発表した。また、この語が用いられた挿話の一つを取り上げ、政治・宗教的背景および作家の人的関係との比較を行い、その結果を日本フランス語フランス文学会秋季大会のワークショップにおいて発表した。 他方で、年度はじめにパリ・ソルボンヌ大学で開催された研究会「古代・近代の編集者としてのラブレー」、およびフランスとアメリカの研究者で共同開催された16世紀研究会に参加し、それぞれ最新の文献学的ラブレー研究の成果や、アメリカ・フランスの研究動向を把握する機会を得た。特に後者では、長年アメリカおよびスイスを中心に活躍してきた研究者の研究歴を聞く機会を得ただけでなく、同氏から本研究の「グロテスク様式」に関するアドバイスを受けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な文章技巧理論書の調査と二次資料の収集を終え、テキスト分析に取り掛かっているため、平成27年度の計画の主な目的を達成している。造形芸術に関する人的交流の調査に未着手の部分があるが、その分ラブレーの描写技巧の読解に必要となる暗号学に関する人的交流の調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、造形芸術に関する人的交流に関して初年度に着手できなかった部分の調査を続けながら、ラブレーのテキスト分析を行いたい。必要に応じて、コロンナ『ポリフィロの夢』やアリオスト『狂えるオルランド』との比較検討も行っていく。また、文章技巧理論におけるジャンルの概念を精査する必要がある。これらの課題に関して、フランスより研究者を招聘して意見交換を行う予定である。
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Causes of Carryover |
一部の購入予定図書資料がデジタル化されWEB上で参照できることが判明し、それを利用したため、若干の未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、16世紀文学および建築関係の図書購入費、携帯用パソコンと周辺機器、フランス人研究者の招聘旅費が主要な使用方法となることが予測される。必要に応じて、論文発表のための校閲料、学会発表のための旅費にも充てたいと考えている。
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Research Products
(2 results)