2015 Fiscal Year Research-status Report
古代ローマにおける文学・神話・社会をめぐる研究基盤の確立
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15K16717
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
河島 思朗 東海大学, 文学部, 講師 (80734805)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / オウィディウス / 変身物語 / 神話学 / ウェルギリウス / アエネーイス / ローマ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の目的のひとつは、オウィディウス『変身物語』の詩的構造分析であった。『変身物語』は大小さまざまな物語群から構成されているため、叙事詩であるにもかかわらず、「叙事詩にふさわしい統一性」を欠いた作品であると理解されてきた。本研究は、作品の性質を提示する「序歌」と呼ばれる部分に着目し、考察することによって、詩人が企図した新たな叙事詩の性質と、統一性を作り上げる原理を明示した。そのうえで、第10巻をとりあげ、具体的な検証をおこなうことで、実際にどのような形で統一性が維持され、効果を有するかを明らかにした。本研究の成果によって、従来考えられていた以上に、物語群の結びつきが強く、物語相互に影響関係を有していることを解明した。この成果は学会発表および研究会報告によって公開した。 今年度の研究目的のもうひとつは、社会的文脈における神話の分析であった。本研究は、ウェルギリウス『アエネーイス』によって語られるローマ建国神話を、当時の社会的文脈に位置付けて分析することにより、神話と社会の関連を具体的に検証した。文学作品によって語られる神話が、「ローマ」を創り上げるうえでいかに重要な役割を担っていたかを明らかにした。この成果は、シンポジウムにおいて発表した。 また歴史文献資料、考古学資料、および図像資料等を収集するために、ローマへの実地調査を行った。天候や国際情勢の関係で、遺跡での図像資料収集が思うように進まなかったが、ある程度予定していた実地調査を完成した。この調査の報告については、次年度の調査と合わせて、神話と実際の社会との関連を明示できるようなデータベース化を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に基づいて、おおむね順調に進展した。論文として成果をまとめるのに、少し遅れをとった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた研究成果を、論文としてまとめることに重点を置く必要がある。 また、28年度は特に『変身物語』についての研究を推し進めることによって、作品全体の統一性の原理を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
外国への出張が予定よりも短期間しか行くことができなかったこと、また購入予定の古書が手に入らなかったことなどにより、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度からの繰り越し金を出張費および書籍の購入費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)