2015 Fiscal Year Research-status Report
美術批評から見たフランス象徴主義の言説の場の再編成
Project/Area Number |
15K16718
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (20583438)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際情報交換:フランス、ベルギー / 美学 / 哲学 / 世紀末 / 社会思想 / 文明 / アナーキズム / 構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文という形にはまだ至っていないが、アルベール・オーリエの美術批評など、世紀末美術についての言説の読解を進め、また2015年8月の海外出張によって資料探索を行って、2018年度までの研究課題の基盤を作った。ベルトラン・マルシャル『サロメ』の翻訳も始まり(大鐘敦子との共訳、水声社から出版予定)、言語表象と芸術表象の交差する神話的形象についての第一線の研究を日本に紹介する作業も進めている。 また昨年度までの研究課題「マラルメと象徴主義を中心とする無意識の詩学の生成とその展開」の延長線上として、世紀末の女性作家ラシルドの読解・翻訳を進め、『自然を逸した者たち』の抄訳と「アンティノウスの死」の全訳を、『古典BL小説集』(笠間千浪編、平凡社ライブラリー)に発表した(2015年5月)。さらに、女性の身体表象をテーマとした「身体の「自律」から「関係」の身体へ―アニエス・ヴァルダ『歌う女、歌わない女』をめぐって」を研究発表し、『〈68年〉の性-社会の変容と「わたし」の身体』(小松原由理編著、青弓社)に同名論文を寄稿した(2016年2月)。分析対象は20世紀であるが、女性の身体的「自由」や裸体表象といったテーマは、世紀末美術の枠組みの研究から出発したものである。 最後に、神奈川大学非文字資料研究センターから『18世紀ヨーロッパ生活絵引』(鳥越輝昭、ステファン・ブッヘンベルゲルと共著)を刊行し(2015年12月)、「『パリは移動祝祭日』-18世紀パリの民衆的祝祭空間を中心に-」を公開研究会(2016年3月)にて発表した。本発表は『非文字資料研究』13号に論文として掲載される(2016年10月発行予定)。これも時代は異なるものの、都市生活の視点から視覚資料を分析したものであり、ローデンバックの『死都ブリュージュ』やヴェラーレン『触手ある都市』など、世紀末文学の都市表象を考える視点にもなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心となる論文は年度中に公開することはできなかったが、資料の読解は進んでおり、2016年度に公刊する予定である。また研究に付随する著書・論文等は順調に出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の見取り図となるような論文を発表するとともに、雑誌資料のデータベース化など、着手しやすいものから順次公表を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたが、少額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に物品費で使い切る予定である。
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Research Products
(5 results)