2016 Fiscal Year Research-status Report
美術批評から見たフランス象徴主義の言説の場の再編成
Project/Area Number |
15K16718
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (20583438)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際情報交換:フランス、ベルギー / 美学 / 哲学 / 世紀末 / 社会思想 / アナーキズム / 文明 / 構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年8月の海外出張によって資料探索を行い、とりわけ批評言説を通じたナビ派と象徴主義の関係について考察を深めた。また、日本フランス語フランス文学会2016年度秋季大会において、「文学集団の詩学」というワークショップを組織した。世紀末文学を専門とする3人の研究者の発表をコーディネートするとともに、「マラルメと師弟のまじわり」という発表を行い、2017年3月に同名論文を発表した。言説を集団の中で流通させることで、文学者・芸術家が商品化の時代をどのように生きのびるのか、という視点を提出できたと考える。 また、311などの災害や相次ぐ「テロ」の時代にあって、カタストロフィー後の都市を歴史的に考える論集、『破壊のあとの都市空間-ポスト・カタストロフィーの記憶』を2017年3月に出版した。全体の編集とインタビュー、全体の理論的枠組みとなる前書き・序論の執筆に携わるとともに、1871年のコミューン後のパリの荒廃について論じた(「パリは燃えているか?-パリ・コミューンの廃墟をめぐって」)。文学者の言説だけでなく芸術家によるコミューン表象に注目して、19世紀後半フランスの文化的状況を分析するという点で、本研究課題との関わりも大きい業績である。 最後に、神奈川大学非文字資料研究センターにおいて「『パリは移動祝祭日』-18世紀パリの民衆的祝祭空間を中心に-」を査読論文として掲載するとともに、二つの国際シンポジウムで「『18世紀ヨーロッパ生活絵引』から見る都市の祝祭空間」(浙江工商大学共催)、「写真のポスト・トゥルース性-非文字資料としてのパリ・コミューン表象」(台湾大学共催)を発表した。都市や写真といった近代の重要なモチーフを、フランス研究の外部にいる研究者に向けて伝えることで、フランス固有の枠組みを相対化し、今後、世紀末表象をより大きな視点から考察するきっかけとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心となる論文を1本公開したが、美術批評とのリンクを十分には示せなかった。しかし、資料の読解は進んでおり、研究に付随する著書・論文等は順調に出版されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の核となるような論文を発表するとともに、雑誌資料のデータベース化など、着手しやすいものから順次公表を進めていく。
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Causes of Carryover |
発注していた図書が年度内に届かないという予測が立てられたので、次年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費に繰り越す計画である。
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