2017 Fiscal Year Research-status Report
美術批評から見たフランス象徴主義の言説の場の再編成
Project/Area Number |
15K16718
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (20583438)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 美学 / 哲学 / 世紀末 / 社会思想 / アナーキズム / 文明 / 構成 / ベルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年7月に行われた第11回表象文化論学会において、「青猫・以後」と郷愁――「のすたるぢや」の歴史性」と題した発表を行った。萩原朔太郎におけるボードレールやフランス象徴詩の遺産を、挿絵といった視覚表象などの関係から考察するという点で、本研究課題と深い関係をもつものである。「政治の美学化」に関するコメントを踏まえて同年12月に論文を発表した。 また、神戸大学で2017年12月に行われた、マラルメ・シンポジウム2017において、「詩句の危機から再構成の詩学へ-『ディヴァガシオン』と『賽の一振り』を結ぶもの」と題した発表を行った。『賽の一振り』という図形詩の歴史的作品を、デカダンスの風潮や同時代の自由詩論議という文脈、そして視覚性の観点から再検討する試みであった。この発表の内容も論文という形で、2018年9月に『人文研究』195号において発表される予定である。また『賽の一振り』についての特異な分析で知られる、カンタン・メイヤスーの論文の翻訳が、2018年6月に青土社から出版される予定である。 この『賽の一振り』研究を含む19世紀末視覚文化・思想研究については、2017年9月の海外出張によって資料探索を行い、とりわけ美術批評家アルベルト・オーリエについての研究を深めることができた。オーリエについての論文も近日中に発表する予定である。 最後に、『神奈川大学評論』の第88号に、「ジャンヌ・ダルクからジュピターへ―戦後フランスの男性権力表象」と題した論考を発表した。女性表象ではなく男性表象というまだあまり分析されていない主題をめぐって、トランプ大統領就任などアクチュアルな問題と接続させることで、フランスにおける表象研究を一般の読者に紹介するとともに、ミソジニー(女性嫌悪)表象と男性支配的な言説が流通していた19世紀末の文学場・芸術場を考察するための事例研究となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心となるマラルメの図形詩についての発表を一つ行ったが、美術批評とのリンクよりも同時代の詩論や思想との関連を強調した。世紀末の美術批評をめぐる一次資料・研究資料の読解は着実に進んでいると思われるが、研究全体の核となるような論文をなるべく早く発表して、次なる研究プロジェクトにつなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
雑誌資料のデータベース化など、着手しやすいものから順次公表を進めていく。
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Causes of Carryover |
2018年3月に現地フランスで購入予定であった書籍が入手できず、余剰が生じた。2018年度は本研究の最終年度であるため、購入予定を前倒しして実施する。
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