2015 Fiscal Year Research-status Report
近世・現代南アジアにおける宗教と倫理:ガウディーヤ派の視点から
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15K16726
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
置田 清和 京都大学, 白眉センター, 助教 (70708627)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒンドゥー教 / サンスクリット / インド哲学 / ヴィシュヌ教 / ベンガル文学 / インド古典 / 文献学 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、オックスフォード大学ヒンドゥー教研究所において週に一度のサンスクリット講読会を開催。テキストにはバラデーヴァ・ヴィディヤーブーシャナ(18世紀)の『タットヴァディーピカー』を使い、写本に基づいたテキスト校訂、英訳を試みた(2015年4-6月)。 2、ハンブルク大学アジア・アフリカ研究所のハルナガ・アイザックソン教授を訪問、シンハブーパーラ(14世紀)著『ラサールナヴァスダーカラ』についての読書会を2回開催(2015年7月3-14日)。 3、ハイデルベルク大学南アジア研究所のアナンダ・ミシュラ博士を訪問、『バーガヴァタ・プラーナ』10巻33章27-36節に対するヴァッラヴァ(16世紀)の注釈書を英語に訳した(2015年7月21日ー29日)。 4、京都大学文学研究科インド古典研究室の横地優子教授、ディワーカラ・アーチャールヤ准教授、ソームデーヴ・ヴァースデーヴァ特定外国語担当教授とともにルーパ・ゴースワーミ(16世紀)著『ウッジヴァラニーラマニ(燦蒼玉)』14章207-233節とジーヴァ・ゴースワーミー(16世紀)の注釈書『照視界』の読書会を毎週一回行った(2015年10月20日ー11月10日)。 5、シマンタ・ロイ氏(The Bangla Language Institute, Independent University Bangladesh)とともにヴリンダーヴァンダーサの『チョイトンノバガヴォト』、クリシュナダーサの『チョイトンノチョリタムリト』の一部をベンガル語から英訳した(2016年2月2-19日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1、ルーパ著『ウッジヴァラニーラマニ(燦蒼玉)』14章とジーヴァの注釈書の校訂と英訳を一通り完了することができた。これによりルーパとジーヴァの基本的感情(sthayi-bhava)に対する見解を把握することができた。 2、ジーヴァ著『プリーティサンダルバ』の111章の読解、英訳作成作業に着手することができた。これにより、ジーヴァの信愛に基づく美的経験(bhakti-rasa)の理論に対する考察を深める事ができた。 3、ガウディーヤ派中期のヴィシュヴァナータ・チャクラヴァルティー(17世紀)著『スヴァキーヤートヴァニラーシャヴィチャーラ(既婚説否定論考)』と彼の弟子クリシュナデーヴァ・バッターチャーリヤ(18世紀)が関わった公開討論のベンガル語資料に基づいた論文の草稿を準備することができた。 4、オックスフォード大学ヒンドゥー教研究所、ハンブルク大学アジア・アフリカ研究所、ハイデルベルク大学南アジア研究所への研究訪問を通して他の研究者との交流を深めると共に、当該研究に関連する種々の思想家の著作にふれることができた。 5、海外(ドイツ、スイス、タイ)、国内(京都大学、東京外国語大学、高野山大学)の学会発表を通して研究成果を十分に発信することができた。また、招待講演(海外:イギリス、国内:大正大学)を通して研究成果を広く社会に還元することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1、ガウディーヤ派後期(19~20世紀)の著者の思想理解:バクティヴィノーダは、『梵天讃歌集(Brahmasamhita)』5章37節に対するベンガル語注釈書の中で婚外関係肯定派・否定派による論争に言及し、両派の折衷説を唱えている。この資料を英訳し、19世紀ガウディーヤ派を代表する著者の婚外関係に対する認識を明らかにする。また、彼の息子であるバクティシッダーンタはさかんな出版活動を通じてガウディーヤ派の布教に努めたが、彼の監修していた『善人の喜び(Sajjanatosani)』、『ガウディーヤ』などのベンガル語雑誌に掲載された記事を通して20世紀におけるガウディーヤ派の倫理観を理解する。 2、ムガル帝国期(16~18世紀)におけるイスラーム倫理観の理解:イスラーム倫理学における古典、ナスィールッディーン・トゥースィー著『ナスィールの倫理』に焦点をあて、イスラームにおける結婚観を調べる。この作品はムガル朝のアクバル帝も聴取したと言われる。イスラームの女性観についてはスーフィー導師ニザームッディン・アウリヤー(14世紀)の『心の講話(Fawa'id al-Fu'ad)』 などの説教集(ペルシャ語)も検討する。これによって治世者のみでなく、一般大衆がどのような倫理観を持っていたのかを理解する事ができる。
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Causes of Carryover |
京都大学スーパージョン万プログラムの支援を獲得したため、科研費から出費する予定だった海外出張の経費を削減することができたから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロフィルム用のスキャナーを購入予定。
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Research Products
(10 results)