2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16732
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
窪田 悠介 筑波大学, 人文社会系, 助教 (60745149)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 範疇文法 / ハイブリッド範疇文法 / 統語論 / 意味論 / 削除現象 / 動的意味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、研究代表者が提案している言語理論であるハイブリッド範疇文法に動的意味論を組み込み、削除現象の分析を行うことである。本年度は、昨年度行った関連研究動向の調査と、理論的な基盤の整備に基づき、具体的な言語現象の分析を集中的に行った。特に、従来の研究において削除現象に関して目に見えない統語構造を仮定する最も強い根拠の一つとされてきた、削除現象が他の言語現象(具体的には、wh移動や、比較構文など)と複雑に連動する現象に関して、統語論と意味論のインターフェイスを精緻に構築することで、目に見えない統語構造を仮定せずに当該の現象を説明できることを具体的に示すことができた。 本年度の主な研究成果は以下の通りである。1昨年度着手した、削除現象とwh移動の連動などの現象に関する分析を進め、国際学会LAGB 2016において発表した。2 1の研究発表に基づき研究論文の草稿を執筆した。 上記の研究は、昨年度Linguistic Inquiry誌に受理されたpseudogappingの論文に基づき、削除現象の理論的分析に関する定説に対して根本的な再考を促すものであり、ハイブリッド範疇文法の文法理論としての独自性を具体的な言語現象に基づき実証するための一つの大きなステップとなるものである。来年度以降、この研究の成果を論文にまとめ、主要な学術誌に投稿することを予定している。 また、本年度は、オハイオ州立大学において、10月にワークショップNew Landscapes in Theoretical Computational Linguisticsを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度行った関連研究動向の調査と、理論的な基盤の整備に基づき、具体的な言語現象の分析を集中的に行った。研究計画書においては、ハイブリッド範疇文法の意味論部門の整備を進めることで、現在までに分析を進めてきた言語現象よりもさらに複雑な言語現象の分析が可能となり、言語理論研究に対する大きな貢献をなすことができるはずであるという見通しを示した。現在までの研究状況は、この見通しを具体的な成果によって裏付けるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度にあたるので、本年度に開始した削除現象とwh移動の連動などの現象に関する分析を特に重点的に進め、学術誌に投稿できるレベルにまで仕上げることを目指す。さらに、本研究を足掛かりとした理論言語学・計算言語学分野における新たな研究の体制作りを、国内外の関連研究者とともに現在計画しており、この計画をさらに具体的にしていくための打ち合わせも行っていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、本年度直前に米国での長期の研究滞在から帰国した。このため、年度当初は、国内での生活環境や研究環境のセットアップなどのため、研究活動に専念する時間を昨年度ほどは取れなかった。これにともない、本年度予定していた夏の長期の海外出張を見送らざるをえず、次年度使用とした。さらに、昨年度に引き続き、筑波大学の国際テニュアトラック制度により、比較的潤沢に旅費の支給があったため、9月のイギリスでの国際学会での発表と10月の米国でのワークショップの二度の海外出張についてはそちらの費用を使用し、効率的な運用ができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を使って、来年度の後半、研究を共同で行っている米国の研究者を3か月程筑波大学に招へいし、研究を集中的に進め準備中の草稿を学術誌に投稿する論文として仕上げることなどを計画している。また、昨年度と本年度に開催したワークショップの企画の継続として、来年度、同種のワークショップをもう一度開催することを追加計画している。
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