2015 Fiscal Year Research-status Report
オーストロネシア語族比較文法論としてのラマホロット語動詞連続構文研究
Project/Area Number |
15K16734
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
長屋 尚典 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (20625727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語学 / 言語類型論 / フィールド言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーストロネシア語族は1,200を超える言語が属する世界最大の語族の一つである。この語族は台湾を祖地とし、そこからフィリピン・西インドネシアに渡り、さらに東インドネシア地域を経て、オセアニアの島々に拡大していった。東インドネシア地域のオーストロネシア語族の言語は、この語族の歴史を考える上で極めて重要である。なぜなら、フィリピン諸語・西インドネシア諸語で存在した動詞形態論が消滅し、かわりに動詞連続構文が発達したと考えられるからである。しかし、両者の関係を実際に比較検証した研究はない。そこでこの研究計画では、東インドネシア諸語であるラマホロット語の動詞連続構文を、フィリピン諸語のタガログ語との比較を通して分析する。具体的には[I]ラマホロット語の動詞連続構文を記述的に分析したうえで、[II]タガログ語のフォーカス・システムと比較し、[III]両者の共通点・相違点とその背後のメカニズムを明らかにする。 本研究計画は、インドネシア・フィリピンにおいてフィールド調査を実施し、[A] 自然談話による動詞連続構文基礎データ、[B] 聞き取り調査質問票による比較対照データを収集することで上記研究課題に答えようとする。 平成27年度は研究計画の初年度として基礎的研究を集中的に行った。すなわち、動詞連続に関する理論的・言語類型論的文献調査ならびに[A][B]に基づくデータ収集である。平成27年9月にインドネシア、平成27年7-8月にフィリピンで調査を行いデータを収集した。さらにその成果を The Thirteenth International Conference on Austronesian Linguistics や Affectedness Workshop 2015 などの国際学会ならびに国内学会で発表した。 このように本年度遂行した研究は上記研究目的を達成するための基礎となる重要なものである。また、複数の国際学会・国内学会でその成果を広く公開できた点でも意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は2つのことを目指した。第一に、データ収集のための基礎研究である。この目標については、まず、[B]の調査票を完成させた。動詞連続の言語類型論的研究だけでなく東インドネシア諸語の文法書も参照しながら調査票を作成した。第二に、1ヶ月 (インドネシア) と2週間 (フィリピン) のフィールド調査を行い、調査票を試し調査項目の確認を行った。この際、[A]自然談話データの収集も行った。また、本年には国際オーストロネシア諸語学会に参加し、このプロジェクトに関連した発表を行い、国内外の研究者と情報交換・資料収集を行った。このように、平成27年度に目指した課題を達成することができたので、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は主に3つある。第一に、データのさらなる収集である。これまでの調査ですでにある程度のデータを収集することに成功しているが、十分とは言いがたい。したがって、平成28年度ではさらにデータ収集に励むことにする。 第二に、データのコーディング作業を進めることである。これまでに収集したデータを分析のために使うには、データを加工し、メタデータを付与し、実際に使用できる状態にしなくてはならない。そのためにコーディング作業が必要である。もちろん現地調査の段階からすでにコーディング作業は推進しているが、平成28年度はもっと進める必要がある。 最後に、そして、何より、得られたデータを分析して研究課題で設定した問題に取り組む必要がある。既に平成27年度に得られたデータを利用して多機能語 enen「作る」の分析を進め、その成果を平成28年5月に The 26th Annual Meeting of the Southeast Asian Linguistics Society (国際学会、マニラ) において発表する予定である。
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Research Products
(12 results)