2018 Fiscal Year Research-status Report
視聴覚コーパスに基づくオノマトペの実証的語用論研究
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15K16741
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秋田 喜美 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20624208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オノマトペ / 擬音語 / 擬態語 / 音象徴 / 類像性 / マルチモーダル / コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、オノマトペ(擬音語・擬態語)に関する書籍の編集を完了するとともに、オノマトペ研究の概説などを執筆した。また、いくつかの共同研究と新たなコーパス調査を開始した。 まず、2016年度に開催した国際シンポジウムに基づく書籍Ideophones, Mimetics and Expressives(John Benjamins社)の編集を完了した。この書籍は、オノマトペの国際的研究における史上3冊目の論文集であり、今後世界で広く読まれることが期待される。 次に、オノマトペ研究に関する概説や文献目録の執筆を日英語で複数行った。これまで収集してきた関連資料の再評価と研究史の整理を行うことで、これらの蓄積を関連研究者・学生あるいは一般向けにまとめ直すことができた。これにより、閉鎖傾向にあるオノマトペ研究に多少の風穴が開けられたのではと期待する。 また、『日本語歴史コーパス』(国立国語研究所 2019)を用いたオノマトペの形態・統語的構文の通時的変遷を観察する試みを開始した。これにより、本研究課題が目的とするコーパスを用いたオノマトペの多角的分析における一つの道が開けることになろう。 共同研究としては、村杉恵子氏(南山大学)と日本語における「ゆるふわ」「かりもふ」「きもかわ」のようなタイプの新語形成に関する意味論的・形態論的考察を論文化した。また、ボニー=マクリーン氏(オーストラリア国立大学)と日英語話者の音象徴知覚(音声が持つイメージの知覚)に関する対照実験を実施し、文章化した。いずれも今後のプロジェクトの展開に重大に関わる研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究量・執筆量ともに、当初見込んでいたよりも多くの成果を上げることができたものの、本研究課題の中心テーマである「視聴覚コーパスを用いたオノマトペの語用論的研究」については、数年前に行った調査に基づき1本の論文を完成させるにとどまった。その理由としては、体調不良により学会発表などの活動が最小限にとどまったことと、複数の関連共同プロジェクトが進んだことが挙げられる。後者については、今後、本研究課題へのプラスの効果が期待できる。また、本年度は歴史コーパスの活用を開始するなど、今後のコーパス研究への足がかりもつかむことができた。したがって、最終年度となる次年度は、これらの積み重ねを利用し、本研究テーマの現在地と今後の方向性をはっきりさせたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が掲げる「視聴覚コーパスを用いた語用論的研究」については、NHKアーカイブスに基づき、ある程度のデータを数年前に作成済みである。本研究期間中に生まれた種々の観点に基づき同データに新たな分析を加えることで、プロジェクトを締めくくりたい。また、いくつかの実施済みの調査については論文化の必要があるが、これには1年を通して随時取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
主として、予定していた旅費の支出が、体調不良によりなくなったため。次年度の旅費や論文の校正代などに当てる。
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Research Products
(13 results)