2019 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical pragmatic study of ideophones based on audiovisual corpora
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15K16741
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秋田 喜美 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20624208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オノマトペ / 擬音語 / 擬態語 / 音象徴 / 類像性 / 言語類型論 / 言語起源 / 体系性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、視聴覚コーパスにおけるオノマトペ(擬音語・擬態語)の観察から、そのコミュニケーション上の機能を探るものである。最終年度は、本課題から導き出される2つの根本的問題を中心に研究を進めた。 1つ目は、オノマトペの「原始性」である。オノマトペは、その模倣的性質から、漠然と言語の起源に結び付けられることがある。本研究では、オノマトペが豊富とされる言語の類型論的特徴を概観することで、オノマトペの原始性にいくらかの傍証を得た。オノマトペは、言語進化の比較的早い段階に位置付けられることがある膠着型、SOV型、動詞枠付け型といった特徴を持つ言語に多いようである。さらに、オノマトペが述語外で用いられるか(例:家の周りをグルグルと回る)、述語の一部として用いられるか(例:家の周りをグルグルする)といった言語内・言語間に見られる多様性が、オノマトペの言語体系への統合度合いを反映している可能性を考察した。 2つ目は、オノマトペの語彙項目としての「体系性」である。従来、オノマトペは語音と意味の間に自然な関係を持つ「音象徴的」な語類と考えられてきた。例えば、「サラサラ」より「ザラザラ」が粗くて不快な手触りを表すのは、音象徴的な現象とされる。しかし、特定の言語の語彙体系の一部として存在している以上、オノマトペの音象徴には、その言語独自の「不自然」な音と意味の関係が宿りうる。本研究では、日本語オノマトペの音と意味の関係を統計的・実験的に調査し、その言語個別的な体系を炙り出した。例えば、「サラサラ/ザラザラ」のような有声性(清濁)の対立は、日本語話者には最重要な音象徴的対立を生むが、通言語的には必ずしも一般的ではなく、非母語話者には意味の違いが推測しがたいことがある。 このように、本研究課題は、オノマトペの言語的特徴を追究することで、未だ根本的課題の多いオノマトペの言語学に新たな道筋を示した。
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