2017 Fiscal Year Research-status Report
母音の無声化の実証的研究:韻律と形態の役割、および言語習得に着目して
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15K16751
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
平山 真奈美 成蹊大学, 文学部, 准教授 (90580027)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 母音の無声化 / 音韻論 / 言語習得 / 形態論 / ポストレキシカル |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語の音声、音韻を語る上で重要な音声現象である母音の無声化について、たくさんの先行研究が行われているものの未解決の事柄も多いことから、本研究では、未解決の課題のいくつか、特に、1語末の無声化について、母音があるのかないのか、2他のモジュール、特に形態論と、母音の無声化のかかわり、3子どもが母音の無声化をどのように習得するのか、の3点を課題として取り上げている。 当該年度に関しては、まず前年度に密接に関わる分野として着手した、日本語の拗音の音韻構造解釈と母音の無声化についての研究に大きな進展があり、国際雑誌(Journal of Japanese Linguistics、査読あり)に掲載された。大きな成果といえる。 語末の無声化に関しては目立った進捗を遂げられなかったが、形態論との関わりに関しては、これまで行った産出実験2件および話し言葉コーパスのデータ分析をまとめ、初稿を完成させた。母音の無声化は音声的な現象であり、このような現象で形態論の情報が影響がありうるのかどうかという点を日本語の母音無声化を通して調査するもので、日本語の母音の無声化というローカルな視点のみならず、一般的な音韻論の観点から、音韻論の理解に寄与する研究課題である。結果としては、限定的ながら形態論の情報が母音の無声化率に影響することがわかった。次年度に雑誌へ投稿する予定である。 もう一つの課題である子どもの母音の無声化ルールの習得については、録音データを入手した。平成30年度に本格的に分析や成果発表を行う予定である。申請者はまた、複雑な名詞句構造のプロソディーの言語習得の研究を同時進行させており、その研究から得た知見も、本課題に反映させながら研究を進めてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
語末の無声化についてあまり進捗がなかったものの、他の課題項目および関連課題に成果が出せた。まず拗音の音韻的解釈に関する研究の成果が雑誌論文として出版された。また形態論との関わりに関する研究では、予定以上に実験やコーパスの結果を入れてまとめた論文の初稿が完成した。また言語習得に関する課題は来年度に向け下準備ができた。これらを総合して、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本課題最終年であるので、まず形態論との関わりについての論文(初稿完成済み)を雑誌に投稿し、まとめとする。また言語習得の課題については、本研究が基礎を作るものであるが、引き続きデータを分析し、成果を発表する。
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Causes of Carryover |
当該年度は海外学会での発表を行わなかったため、計上したその予算を使わなかった。次年度は6月にすでに海外出張を予定しており、ここで次年度使用額を使う予定である。
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